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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第61回 huit−6
 和磨から、新たなヴォラールの話を聞かされ、昼休み、パピヨンは保健室に行った。
 果たして、そこに、話通りの女がいた。
「あなた、誰?」
 パピヨンの知らない女だ。
 気配は、明らかにこっちの世界の住人ではないことを、感じさせる。だから、問いかけたパピヨンの声には、険があったかも知れない。
 この女が何者かわからないが、和磨がオンブルを見破ったということは、この女もあの「トレゾー」……「鞠尾和磨が愛した女のヴァージン」が目当てなのは間違いない。
 女が、右手に何かを出現させ、額の中央に当てた。その「何か」は、中央部が龍(りゅう)の頭部をあしらったサークレットのようだ。
 念装した女は、紫色のイブニングドレスに、マゼンタのショールという出で立ちだ。
「儂(わし)の名は、紫苑(しおん)莉勇(りゅう)。ドラゴン・ヴィオレと覚えておくがよい」
 パピヨンの知らないヴォラールだ。なぜ、こんな女が、あの「トレゾー」を狙うのか。
「あなたが、なんのために『トレゾー』を狙うのかわからないけど、邪魔はさせないわ」
 パピヨンも、念装しようとした。だが。
「やめておけ。汝(うぬ)程度では、儂には勝てぬ」
 この言葉が、自信からくるものか、過信からくるものかわからないが、少なくとも、この女は、それなりの技量があると自負しているのだろう。
「わからないわよ?」
 そう言って、念装すると、パピヨンは時間と空間を盗み、光の刀を出して、距離を盗んで間合いを詰め、ドラゴンに斬りつけた。
 一瞬、空間が歪むような違和感があったが、手応えはあった。
 だが。
「……ウソ……」
 パピヨンに対して、怖れを抱かせる、そのつもりでドラゴンの肩に斬りつけた。
 だが、その痕跡はまったく見られない。
 今の斬撃には、こちらの遊園地で盗んだ、自由落下型アトラクションの、落下エネルギーのエッサンスを乗せてある。時間と空間を盗んだ中で、さらに距離を盗んで踏み込み、剣技のエッサンスに、さらに落下エネルギーのエッサンスを組み合わせるという、いわば負担の大きい複合技だから、かなりの集中と瞬発力、精神力が必要だし、ほかのこと……例えば防御などに意識は回せないが、隙を突いて相手に浴びせれば、一撃必殺の致命傷になるはずだ。
 だが、アルミュールが、そのエネルギーを相殺するために消滅する気配はない。
 まさか、この女は、致命的ダメージを盗んでもなお、消滅しないほどの「大容量」のアルミュールをまとっているのだろうか?
 ドラゴンが言った。
「言ったであろ? 汝では、儂には勝てぬ。ついでに言っておく。儂の世界の『沢渡(さわたり)和美(かずみ)』は、今、ある男に求婚されておる」
 一瞬、なんのことか、わからなかったが、その意味に気づき、パピヨンは驚愕した。
「ま、まさか、あなた、あたしの世界の融合先の……!」
 頷き、ドラゴンが言った。
「たとえるなら、儂の世界は、汝の世界よりも上位に位置する。汝がこちらの世界のエッサンスを、一度に数多く、そしてたやすく盗めるように、儂は汝の世界のエッサンスを自在に盗める。つまり、ここの世界では、さらに多くのエッサンスを盗める、ということでもある。汝が盗んだエッサンスを、さらに儂が汝から盗むなど、朝飯前」


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