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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第59回 huit−4
 やっぱり由梨と昼メシ、食いたかったからな。月曜日、三時間目が終わったあと、由梨がいる四組まで行ったんだが、体調を崩したとかで、早引けしてた。
 だから、夕方、由梨の家に行ったが、「ベッドで寝込んでる」って、おばさん……由梨のお母さんに言われて、会えなかった。
 で、今朝、モーニングコールもなかったし、心配だったから、家に行ってみたんだ。
 昨日と違って、玄関まで出てきたんだけど。
「和磨くん、あのね」
 と、玄関の外まで出てきた由梨は、パジャマ姿だった。そして、おばさんやおじさんたちに話を聞かれないようにするためか、玄関ドアを閉めて、俺に言った。
「和磨くんが悪いんじゃないの。でも、ね」
 そして、怯えた目で、俺を見上げた。
「男の人が、怖いの。怖くて仕方ないの」
「はあ? なんだ、それ?」
「わからない。でも、なんだか、男の人が、すごく怖くて。……本当は、お父さんのことも、『男の人』だって思うだけで、怖いの。同じ空間に、一緒にいたくないの。だから、私……」
 そう言って、泣きそうな顔になってから言った。
「今日、学校、お休みするって、先生に言っておいて?」
 そして、由梨は家の中に入っていった。

「鞠尾くん、どうしたの? 随分、沈んでるけど?」
 朝、教室で川平が俺に声をかけた。
「ああ、川平か。由梨に会いに行ったけど、なんか、おかしくて……。て、お前には関係ねえじゃん」
 そうだ、こいつにはなんの関係もないこと……、でも、ないっぽいんだよなあ。
 川平によると「トレゾー」とかいうものに関わりのある人間には、川平たちヴォラールが使うカムフラージュの影響を、受けにくいっていう共通点があるそうだ。由梨は、そのカムフラージュの影響を、完全に受けてない感じがある。こずえちゃん……白根(しろね)先生になりすましてるシャットって奴から、変な臭いがするんだが、由梨にも、同じ臭いが嗅ぎ取れたらしいからな。
 とすると、由梨も「トレゾー」とかいうものに関わりがあって、結局、川平とも無関係じゃない……ってことになるんだろうなあ。
 だから。
「なんか、由梨のヤツ、朝、おかしくてさ」
「おかしい?」
「ああ。よくわからないけど、男の人が怖いって。……そう言えば、俺を見る目が、変だったなあ」
 川平が呆れたように、蔑(さげす)むような目になった。
「あなたねえ。……ケンカとかしたんなら、早く仲直りしなさいよね?」
「してねえよ。ていうか、お前には、そんなこと、関係ねえじゃん」
「関係ない? あのね、あなたと吾妻さんが、ケンカ別れしちゃったら、困るのよ!」
「はあ? なんで、俺と由梨が喧嘩したら、お前が困るわけ?」
 なんで、俺と由梨との間(あいだ)のことまで、こいつに口出しされねばならんのか?
 俺の言葉に、明らかにキョドってから、川平が言った。
「えっと、困る、っていうのはね!? つまり、……。そ、そう! あなたが『トレゾー』の所有者である以上、あなたのメンタルが不安定になったら、困るから!」
 ふうん。俺には、詳しいことはわからねえから、「そういうものだ」っていわれれば、「はい、そうですか」と答えるしかないな。
「で。どうなの、実際?」
「実際、て?」
「吾妻さんの様子。修復不可能なぐらい、ひどいの?」
「だから、喧嘩しとらんというに! ……でも、本当におかしいんだよなあ。日曜日はなんともなかったのに、昨日は朝からちょっと様子が妙だったし」
「昨日の朝? ……月曜日か。あなた、何か、妙なことしちゃった? 例えば、日曜の夜に他の女の子とイチャイチャしてて、もしかしたら、それを吾妻さんが、こっそり見ちゃったとか?」


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