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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第58回 huit−3
「まず、午後七時八分。警備員が入ってきたのを確認して、警備室にいる仲間が、機材をいじって、録画しないようにする。その間(かん)、展示室に入った警備員は、何らかの動画撮影機材を、防犯カメラの前に持ってきて、一分から二分程度、『防犯カメラ視点』での、展示室内の動画を撮影する。それを繰り返す。そして午前〇時八分から一分五十秒ほどの消去の間に、映像のリフレイン編集をした機材を、防犯カメラの前に据え付け、そのモニター画面を防犯カメラのレンズの前に持ってきて、動画を再生させる。つまり、午前〇時十分あたりから、一時間の映像は、実際の展示室のものじゃなくて、録画されたものだったの」
「ああ! だから、同じ虫が、同じ動きを何度もしてるっていう、不自然なことになったんだ!」
「映像に映っている物とか、計ってみたら、〇時十分以降のものと、それ以外のものとで、長さとか、角度とか、微妙に違っていたわ。そんなことが起こるとしたら、〇時十分以降、一時間あまりの映像だけ、防犯カメラの位置とか、角度や設定なんかが変わっていたっていう、おかしなことになる」
 その言葉に、納得したのか、水島は何度も頷いている。
「だから、本当の犯行時間は、午前〇時十分から、午前一時九分までの間。これだけあれば、ゆっくりと犯行が行えるわね。本当なら、丸々一時間、映像を撮っておきたかったでしょうけど、それだけの機能を持った録画機材、再生機材は、多分、大きくて重いから、長時間、カメラの前に設置できない。だから、録画時間が短いけど、コンパクトで軽くて、なおかつ高精細の機器を使わざるを得なかった。映像が不自然に思われるかも知れないっていうリスクを背負ってね。しかも、ここで、ちょっとしたアクシデントが起きてしまった」
「アクシデント?」
 頷いて、美砂子は言った。
「宿直の管理人さんと出会ってしまって、話し込んだのかどうか、それはわからない。トイレに入ってたから、とも思ったけど、それは違うかな? ただ、そのアクシデントのせいで、警備員が午前一時十二分頃に展示室に入室しないと、不自然な状況になってしまったんじゃないかしら? だから、本当なら一時八分頃から録画しないようにして、その間に防犯カメラの前の機材を撤去。警備員が、異変に気づいたことにして、警察に通報、というシナリオだったのに、変わってしまった。リアルに見せるつもりだったのかどうか、そこまではわからないけど、録画が復旧したときに、警備員が驚いている映像を入れてしまった」
「なぁるほどぉ……。でも、なんで、そんな手の込んだことをしたんですか?」
 水島の問いに、少しだけ考えて、美砂子は言った。
「さあね。それは犯人に聞いてみないと。もしかしたら、映像の消去に規則性があることを見せて、外部の誰かが、そんな動作をするようなプログラムでも仕込んだように見せかけたかったのか。とにかく、当日の警備員たち、身柄を押さえるわよ!」
 美砂子の言葉に、水島が「ハイ!」と、答えた。

 警備室を出て、美砂子は思っていた。
 自分の感触では、この件は「か−二百一号」によるものだ。なぜ、この事件だけ、これまでと様子が違うのか。もしかしたら、内部で何らかのトラブルでもあって、一部のものが勝手に起こした事件だったのか、それとも、「何かを急いでいた」ので、手近のところを狙ったのか。
 そして。
 もし、美砂子の勘が正しいとすれば、この事件の背後には、かなり大きな組織がある。
 ひょっとすると、知能犯係、いや、県警との合同で一つの企業体そのものを検挙することになるかも知れない。
「計画倒産……。そんなことをする必要があるのかどうか。その辺も調べないといけないかも……」
 そう呟き、美砂子は早足になっていった。


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アクセス: 2014