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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第52回 sept−4
 月曜日、午後の日射しが眩しい中、シャットは、ある技能のエッサンスを盗むことに成功した。まさか、このような技能……いや、「職能」を持った人間が、この街に来るとは思わなかった。天の配剤とは、まさにこのことだろう。このエッサンスの主は、三日後には館端市を離れ、遠方の街へ帰る。あまり遠くへ行けない彼女は、その人物がこの市を離れると同時に、このエッサンスを返さねばならない。いつものように殺すことも考えたが、この職能の持ち主は、生かしておいた方が、この世界がずっと面白くなるような気がしたので、殺さずにおいた。
 あくまでも「行動可能半径内」に、生活の拠点がある人物、あるいは、その縁者からしか、エッサンスを盗むことができない。だから、その半径に関係のない旅行者などの場合、その人物が「行動可能半径内」から、出てしまうと、ほぼ自動的に、エッサンスが彼女から抜けてしまう。
 この原理はよくわからない。おそらくアカシックレコードを経由して情報を取得する関係上、「行動可能半径内」に「主体」を置いていることが前提になっているのかも知れないが、詳しくはわからない。
 だが。
「三日もあれば、十分(じゅうぶん)。これで、パピヨンを始末できるわ」
 思わず、笑みがもれてくる。
 その時、音が消えた。
 警戒とともに周囲を見回すと、五メートルほど先に一つの影。
 青いスウェットに、青いデニムスカート。ウルフカットにした、吊り目気味の、自分と同年齢ぐらいの若い女。
 驚きながら、シャットは言った。
「ルー・アジュール。……なんで、あんたまで、ここにいるの?」
 そこにいたのは、シャットと同じ世界のヴォラール、ルー・アジュールだった。
「シャット・ブラン。悪いが、お主(ぬし)の邪魔をさせてもらう」
「はああ? 何言ってんの、あんた!?」
 ルーの言ったことが、理解できない。
 修行バカのルーが、なぜ、こちらの世界に来たのか、そもそもそれがわからない。もしかしたら、シャットの知らないトレゾーがこっちにあって、それを目当てにしているのかも知れない。
 だが、そうだとしたら、シャットの邪魔をする理由がわからない。
 ルーが、兜を出現させ、念装した。青い甲冑姿のヴォラールが現れる。
「シャット。元の世界で、『その様子』を見たことがあるが、お主は、どうもパピヨン・ノワールの命を狙っておるようだな?」
 どうやら、第三者には、シャットが以前からパピヨンの命を狙っていたことがわかっていたらしい。
「それが、どうかしたの?」
「すまぬ。個人的事情で、パピヨンを殺されるわけには、いかなくなった」
 ますます、ルーの言っていることが理解できない。
 ルーが腰の刀を抜いた。
 この女は、自分で剣技を習得しているばかりか、様々な剣技を盗んで、それを修めてきた。そのせいか、「○○流」といった剣法では、なくなっている。「自由自在」といえば聞こえはいいが、要は、決まった型のない「ケンカ剣法」といえた。


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