小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第51回 sept−3
「あのね、水島くん。そんな編集するには、時間がかかるでしょ? それにそんなあやしいことをしてたら、科捜研が気づくって。ていうか、十七分じゃ、犯行と逃走はギリギリでしょ? 大体、なんで、こんな中途半端な映像消去なんてしたのかしら? 消すなら、全部消せば楽なのに……」
 水島は「それも、そうですね」などと、のんきに言っている。
「……まあ、いいわ。それより、もらってきてくれた、例のリスト?」
「ええ。事件当日の、美術館の警備員の配置表と、巡回のローテ表ですよね」
 そのリストを受け取り、美砂子は「あること」を確認するように目を通し始める。
 そして、別に作成しておいた、あるリスト……過去の「か−二百一号」事件の警備員リストとの照合を始めた。
 どうにも、消去映像の、ある「規則性」が引っかかるのだ。
 そして、もし、この「規則性」が自分の推測通りだとしたら。
 だとしたら、この映像は、あとで加工されたものではなく、リアルタイムで操作されたもの……つまり、「消去された」のではなく、その時間、「録画しないように」されたものではないか、ということも考えられないか?
 そうだとしたら、そのことに、なんの意味があるのか?
 それに、そうだとすると、「ある可能性」が浮かび上がってくるのだが……。
 その時、部屋に刑事課強行犯係の沼田が入ってきた。
「鞠尾さん、ここに、森警部補は……。来てないですね」
 その声に、美砂子が顔を上げる。
「ああ、沼田くん。……そうだ、森さんから聞いたんだけど、また刺殺体が上がったんですって?」
「ええ。もう、本当にどうなってるのか。でも、ちょっとだけ、手がかりが見つかったんですよ」
「手がかり?」
 違う部署だが、捜査が進展したのは、興味がある。
「ええ。この間お話ししましたよね、一件目の私立探偵の元カノ。名前が『白井(しらい)美音子(みねこ)』だって、わかったんです」
 と、沼田はメモを見せる。
「私立探偵自身が、探偵事務所の、退職した事務員に紹介してまして。今、その白井って人にあたろうってことで。まだ、始まったばかりですけど」
 水島が、時計を確認しながら言った。
「いいッスねえ、先輩のところ。こっちは手がかりが全然」
 手がかりなら、つかめてきてるでしょ、という思いを込めて、美砂子は水島を睨む。
 そして、再び、リストを見ていると、また、水島が言った。
「もしかしたら、犯人、どこかに潜んでいて、ちょこちょこ何かをしてて、その間の映像を消去してるんじゃないんですか? 例えば、最初の消去時間に、ガラスケースに五センチぐらい傷をつけて、次の消去時間の間に、また、五センチ、切れ目とか入れて」
 その言葉に、心底、呆れながら、美砂子は言った。
「あのねえ、水島くん。そんなことしてたら、巡回に来た警備員さんが気づくでしょ? カメラの映像にだって、展示ケースにおかしいところなんか、映ってないし。そもそも、そんな、ちまちましたこと……」
 言いかけたとき、閃くものがあった。そして、思わず、リストを見直す。
「消去時間に、本当に、なんかの『作業』をしてたの? 一体何をやってたのかしら? ……まさか、本当に『消去した時間を足した』としたら……。とすると、警備員たちは……。となると、『か−二百一号』の背後には。……でも、そんなことをしたら、信用問題になる。メリットなんかないはず……。あ、ひょっとしたら……!」
 ある推理が形になりつつあった。
 もし、その通りだとしたら。
 ハードディスクに、映像が残っている間に、確認しなければならないことがある。
「水島くん、行くわよ!」
 美砂子は立ち上がった。
 カップ麺のふたをあけようとしていた水島が言った。
「え? いや、僕、今から、遅くなった昼食のラーメンを……」
「早くしないと、証拠が消えるかも知れないから!」
 そう言って、美砂子は早足で歩き出す。
「ちょっと、警部補!」
「水島、ラーメン、俺が食っといてやるよ!」
 そんな声を背中に聞きながら、美砂子は走り出していた。
 自分の推理、いや、推測が飛躍しすぎたものだと思いながらも、美砂子は、ある「可能性」に、至っていた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 1393