小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第5回 un−5
 恐怖感がわき起こったとき、しかし、男の表情が怪訝なものになった。そして、
「これは、エスパス・フェルメ!?」
 なんて、意味不明の言葉を出して、周囲を見回した。
 なに、なんなの? これって、この男がやってることじゃないの?
 俺がそう思ったとき。
「ここの時間と空間、盗ませてもらったわ」
 若い女の声がした。
 振り返ると、そこにいたのは蝶の仮面をつけた、黒い人影。
「パピヨン・ノワール!」
 男の声がした。
 男を見ると、その顔には明らかに「憎悪」が浮かんでいる。
 男から「パピヨン」と呼ばれた人影が、俺の隣に立つ。身長は、俺よりちょっと低いから、百六十五センチぐらいだろうか。
「悪いけど、この『トレゾー』、あんたたちには渡さないわよ?」
 男が歯ぎしりをし、逃げるつもりなのか、俺たちに背を向けた。
 次の瞬間。
 パピヨンが小声で何かを言って、男の上空を指さした。
 そこに、金色に輝く、三重の同心円が現れる。一番大きい円の直径は二メートルぐらい、小さい円の直径は一メートルぐらいだろうか。でも、円だけじゃなくて、訳のわからない記号とか、数字とか、文字みたいなものもある。
 その同心円から圧力でも出てるのか、男が動かない。
「博物館で、『魔導書』の『エッサンス』を盗んでおいて、正解」
 そう言うと、腕を伸ばしたまま、パピヨンは右手の指を弾いた。
 すると、男の上空にある同心円が、金属音とともに外側から順々に地上へと落ちる。一番内側にある円が落ちたとき、光が閃いて、地上に落ちた同心円が消えた。
 そこに立っていたのは、「大空栗人」と名乗った探偵じゃなく、デッサンに使うようなモデル人形だった。
 ただし、身長が百八十センチぐらいありそうだけどな。
「大空栗人(ダイカラクリジン)とは、よく名付けたものね。……からくり人形は、もうないわよ?」
 そんなパピヨンの言葉に応じるように、ガラスが割れるような音がして、目の前の空間が砕け、そこから白い影が現れた。その影に向かってパピヨンが言った。
「悪いけど、この『トレゾー』は、あたしのものだから。とっとと帰るのね、泥棒猫ちゃん」
 パピヨンから「泥棒猫ちゃん」と呼ばれた白い影が、笑うように鼻を鳴らして言った。
「それはこっちのセリフだから。その『トレゾー』、わたしがいただく」
 それに、と、白い影が、また鼻で嗤うような音を立てて言った。
「あんた、こっちにいられるリミット、もう終わるんじゃないかしら? わたしと違って、リアンとかアミとかプロフェスールとか、こっちの世界にいるために必要な『エッサンス』、盗んでないでしょ?」
「あたしはね、『エッサンスを盗む』と称して、人の命を奪うとか。あんたのそういうところが許せないの、シャット・ブラン!」
 パピヨンが怒気を含んだ声で言った。
 何が起きているのか、そろそろ説明が欲しいな。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 1343