小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第49回 sept−1
 昼前には、体調は復調した。
 コルボーは「化学物質のエッサンスを抜き取った」と言ったが、要するに「盗んだ」ということだ。だから、「それ」が帰って来た。コルボーが返したか、あるいは、何らかのエッサンスを盗んだために、放棄したのか。
 それはわからないが、とりあえず硝酸アンモニウムを笑気ガスと水分子に戻し、返した。
 もっとも、その段階で一時的に笑気ガスの影響を受け、体が動かなかったが、ここなら、おそらくシャットの襲撃を受けることもないだろうと思い、エッサンスを返したのだ。
 体が動くようになった頃、彼女は服を着た。ただし、ブラウスだけは破れたままだ。修復しようと思ったが、それには複雑な「合わせ技」が必要になる。結論からいえば、破れていない状態の、同じ種類の服を盗むことになるのだが、エッサンスと違い、物質であるから、いろいろと複雑な手順が必要になる。
 まず「破れていない、同じ種類の服」のエッサンスを盗み、それを構築する服地のエッサンスを盗み、それを組み合わせたところで、代替となる大きさの布に、そのエッサンスを「かぶせる」。
 こんなことをするぐらいなら、「破れていない、同じ種類の服のエッサンス」を、破れたブラウスにかぶせた方が楽だ。
 さすがに家に帰り着くまでに、すべての「ひとけ」を盗むのは、難儀だし、ケータイのGPSで確認したら、ここは海面先(かいめんさき)の南端で、海の近く。旗琳(きりん)の北部にある住所から、かなりの遠方だ。ここから住居までの距離を盗むのは、揺り戻しのことを考えたら、かなりの冒険のような気がする。
 あるいは、念装することも考えたが。
「普通に帰った方が、無難か」
 体力的には、大丈夫だろうが、なぜか精神的に疲労が残っている。
 その「疲労の理由」は、わからない。もしかしたら、今度、同じような手を使われたときの対処を、いくつか考えておかなければならない、というプレッシャーのせいかも知れない。このような状態で念装するのは避けた方がいい。今、使っているアルミュールに「飲み込まれる」怖れはないだろうが、万が一のこともある。
「あたし、こんなにメンタルが弱かったのかしらね……?」
 そう呟き、パピヨンは破れたブラウスを、破れていないように見せかけることにした。
「……あら?」
 スカートのポケットに、何か、紙切れが入っているのに、パピヨンは気がついた。

 昼になった。
 正確には、午後一時二十分。
 シャットは、ベッドから起き上がった。
 昨夜のダメージは、かつてないほど大きいものだった。もしアルミュールの緩衝能力がなかったら、おそらく体が爆散(ばくさん)していただろう。
 体の骨も、ところどころ複雑骨折していたばかりか、内臓も損傷していたらしい。痛みを盗むのも、一苦労だった。いずれ、この痛みは帰ってくるだろうが、その時は、できるだけ、小出しになるように調整しないとならない。
「パピヨン……。今度は、八つ裂きにするぐらいじゃ、足りないわね……」
 ベッドから出て、バスルームへと向かう。
 あとで、いろいろとエッサンスを盗みに行こう。昨夜は、パピヨンがどんな手を使って切り抜けたのかわからない。麻酔ガスならば、たとえ盗まれても、浴びせ続ければ、パピヨンの攻撃を封じることができると思っていたから、まさか、何らかの逆転の一手を打たれるとは、思ってもいなかった。
 今度は一撃で仕留められるほどの強力なものが必要かも知れない。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 2054