小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第47回 six−6
 今日は、朝、俺を迎えに来たときから、由梨の様子がおかしい。
 月曜だから、って訳じゃないぞ?
 なんていうか、沈んでるのに、無理矢理、笑顔を作っているって感じなんだよな。
「なあ、由梨。なんか、あったか?」
 俺がそう言うと、俺を見上げた由梨の表情に、かすかに「怯えたもの」が浮かんでいた。
「えっと。なんか、変な夢、見ちゃって……」
「夢?」
 頷き、由梨は、俺をすがるような目で見上げた。
「夜、廃墟みたいなところで……」
 そこまで言って、うつむき、由梨は唇を噛んだ。
 そして、トートバッグから、いつも俺にくれる弁当箱の入った布袋(ぬのぶくろ)を出した。
「和磨くん、今、渡しておくね」
 そう言って、俺から離れ、正門へと小走りになった。
 一度、立ち止まって振り返ったとき、その瞳が……俺を見る目が、どこか怯えているように見えたのは、気のせいか?

「よう、鞠尾、聞いて驚け」
 教室に入って席に着くと、クラスメイトの北田(きただ)淳男(あつお)が俺に言った。
 自慢じゃないが、「聞いて驚け」と前フリされて、驚いたこと、一度もないんだがなあ。
 まあ、聞いておいてやるか。
「なんだよ?」
「養護(ようご)教諭(きょうゆ)の菅見(すがみ)先生、体壊して入院してるんだ」
「それは、この前、色んなところで聞いた」
「かわりの先生が来たんだけどさ。その先生、菅見先生にそっくりなんだよ!」
 菅見先生ってのは、(多分)二十代後半の女の先生。ボブカットで、背が低いせいでもないんだろうけど、カワイイ系の先生だ。で、人気も高いから、ちょっとしたカスリ傷でも保健室に駆け込む野郎どもが多いと聞く。
「そっくり、って、なんとなく似てるってだけじゃないのか?」
「いや、それがさ! 俺も今朝、見かけたんだけど、ほんと、そっくりなんだよ! 身長は、菅見先生よりも高くて、俺やお前よりも高いんだけど、あと、ナイスバディなんだけど、顔とか髪型とか雰囲気とかは、マジで同じ人間かって思うぐれえなんだって!」
 ふうん。ま、世の中には、自分とよく似た人が何人かいるっていうしな。
 そのあと、適当にダベったあと、北田は自分の机に戻っていった。その時、メールが来た。
 姉さんからだ。
 姉さん、金曜日に、出張から帰ってきたんだけど。
『和磨、また出張することになった。夕飯、作っておくから、レンチンすること』
「たいへんだなあ、姉さん」
 そう呟いたとき、チャイムが鳴って、男の先生が入ってきた。
「……あれ? あの、シャット、って女じゃない」
 もしかして、なんか企んでて、職員室に、こもってるとか? でも、あの女自身が、直接、俺に何かしてきたことなんか、一度もないけどな?
「白根先生は、体調を崩されたので……」
 と、臨時でやって来た、定年間近の、古文の先生が言っている中、俺は、空いている席を見た。
「川平も休みだな。昨日はあいつ、元気そうだったし。病気がぶり返したのかも知れないけど。……妙な事態でも、進行してねえといいけど」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 1393