小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第46回 six−5
 ただし、「技能」だけを多く盗み、その「集積体(しゅうせきたい)」として存在するという方法もある。おそらく、修行マニアのルー辺りは、その手を使っているだろう。だが、それには、別の「要素」が必要であるらしい。
 おぼろげに、だが、その「要素」とは「何かの管理者」になることであろう、とパピヨンは思っている。
 だからこそ、彼女は「川平(かわひら)煌(こう)」という本名で、こちらの世界には戸籍のない人間でありながらも、誰からも一切疑われることなく、存在できている。
 ただし、「管理する」ことには、デメリットもあるが。
 今の話から察するに、コルボーは「縁」としてのエッサンスを、一人分しか盗んでいないのだろう。確かに「容量」や「運用」のことを考えれば、複数人のものを盗むのは、骨が折れる。だから、誰かの心を盗んで、その「管理者」になって世界にとどまる、という手をパピヨンは使っているが、これはどちらかというと、デメリットも大きい、あまり使えない「緊急手段」の部類になる。
 というのも、管理対象に危険が及んだ場合、優先して、その保護を行わねばならず、別の行動……トレゾーの奪取ができないこともあるからだ。
 事実、こことは違う世界に行ったとき、一度、シャットはその手を使って、失敗している。管理対象が交通事故に遭ってしまい、その救助に行っている間に、パピヨンにトレゾーを奪われているのだ。
 パピヨンは、「トレゾー」の所有者となる鞠尾和磨の管理者となっているから、シャットのような失敗をする怖れはない。その代わり、管理対象の所有物は、間接的に管理者の所有物でもあるから、「盗めない」。だから、管理から外した瞬間を誰かに狙われる怖れはあるが。
 コルボーが、やや真剣な表情になった。
「ものは相談、というよりは、お願いなのだが」
「悪いけど、あの『トレゾー』、諦めないからね?」
 機先を制してそう言うと、コルボーが苦笑を浮かべて、指で頬をかいた。
「パピヨン。詳しくは言えない。だが、我には、あの海神(かいじん)……海の神のエッサンスに対抗する力が必要なのだ。そのために、戦いの女神にして都市防衛、そして知恵の女神である、あの処女神(おとめ)を、降ろさねばならぬ!」
「あなたが、あたしをここに連れてきてくれて、介抱してくれたことには、感謝するわ。でも、それとこれとは別なの! あたしには、『あの人』が必要! 『あの人』が、あたしの『運命の人』なの! ……ここまで言ったら、あなたにもわかるでしょ?」
 パピヨンの言葉に、コルボーがやるせないような目になる。
「そうか。そうだったのか。……だが、すまない、パピヨン。我にも、どうしても、あの『トレゾー』が必要なのだ。あの『トレゾー』に、ある街の住人全員の命がかかっている。その街は、我にとって、かけがえのない場所なのだ」
 どうやら、平行線のようだ。
 コルボーが立ち上がる。
「キッチンに、パンとスープ、飲み物が用意してある。動けるようになったら、温めるといい。……外からエネルギーを取り入れることを、進んで放棄したら、ヴォラールは、本当に『人間』ではなくなってしまう。我は、そう思う」
 そして、部屋を出て行った。
 コルボーの今の言葉は、パピヨンにも理解できた。
 まだ、身体は万全ではないが、それでも動かしておこう。
 そう考え、沈痛な気持ちを振り払い、パピヨンは自身にかけられていたタオルケットをめくろうとして、あることに気づいた。
「……本当に『何もしていない』んでしょうねえ?」
 ブラジャーこそ着けてあったが、タオルケットを完全にめくると、下半身には、何も着けていなかった。
 ふと、視線を動かすと、テーブルに、ジャケットとスカートがたたんで置いてあり、その隣に、ショーツもたたんで置いてあった。
 溜息をついて、パピヨンはベッドから出た。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 1393