小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第43回 six−2
 アルミュールが消し飛び、七、八メートル離れたところまで吹っ飛ばされた、満身(まんしん)創痍(そうい)となった、一糸まとわぬシャットが、くずおれた。
 上半身を起こし、パピヨンが言った。
「さすがに、アルミュールでも、盗みきれなかったわね。これだけの爆発エネルギーだもの」
 彼女たちがまとっているアルミュールは、全次元の中に、ところどころ存在する「何もない空間」と繋がっている。アカシックレコードの情報を読み、彼女たちは「何もない空間」の制御方法を知った。この空間を使うことで、そこに盗んだものを収納できる。さらに、この空間を使うことで、ダメージも相殺(そうさい)……「空間」の中に放り込める。アルミュールをまとうことで、それ自体が持つ防護力以上の、ダメージ緩衝能力を得られるのだ。
 ただし、その「空間」のキャパシティは、まちまちで、さらに、彼女たちヴォラールが一度に制御できる「空間」の数(・)やキャパシティにも限界がある。さらに、何かを一度に消し飛ばせるほどのエネルギーを、飲み込める「空間」を制御するのは、ある意味、自殺行為でもあった。
 原理はよくわからないが、それほどの「空間」と繋げたアルミュールは、ヴォラール自身を「飲み込んでしまう」らしい。パピヨンも、欲張って、容量の大きい「空間」と繋がったアルミュールを作成したとき、意識が遠のきそうになった。
 それはおそらくシャットも同じはず。もっとも、シャットがパピヨンよりも、ある種の「耐性」があって、大容量の「空間」と繋がったアルミュールをまとっている可能性もあるが、これまでの感覚からすると、パピヨンのものと大差ないはずだ。
 シャットが、小刻みに震えながら、起き上がる。そして、ガラスが割れるような音がしたかと思うと、シャットの姿が消えた。
「あのダメージなら、数時間は動けないわね。……爆発の方向はコントロールしたけど、あたしにも、ちょっと来ちゃったな」
 そして、パピヨンは横になった。
 今、彼女がやったのは、こうだ。
 すなわち。
 笑気ガス……亜酸化窒素の構造式は「N2O」。これに係数をかけた水分子「2H2O」を反応させると、「NH4NO3」……硝酸アンモニウムになる。
 幸い、水なら傍に噴水という形で大量にある。それを使い、彼女は周囲、及び、自分の体内にある笑気ガスを硝酸アンモニウムに変化させた。それを抽出し、盗んで、シャットに向けた。そして、熱エネルギーを与えた。硝酸アンモニウムは、火薬にも使われる。
 目論見通り、熱エネルギーは酸素や水素とも反応して、大爆発が起こり、シャットを退散させたというわけだ。
 音が戻ってきた。
「……回復するまで、『ひとけ』、盗んでおかないと、真(ま)っ裸(ぱ)の女子が転がってるの、見られたら、騒ぎになるわ……ね……」
 意識が遠のくのを感じながら、パピヨンは「ひとけ」を盗んだ。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 2054