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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第41回 cinq−6
 夜、旗琳の中央公園で、パピヨンはアルミュール姿のシャットと一戦、交えていた。
「あんたねえ、ほんとにしつこいわよ!?」
 刀を構え、パピヨンは言った。今回は、念装する時間を稼げていない。ついでに言うと、鞠尾和磨の心を盗んだ帰りなので、少々油断していたところはあった。
 もっとも、いつでも念装できるように、ある種の「クセ」がついて念装にたいした時間も精神力も必要としない、高校の制服を着てはいるが、念装できなければ、意味はない。
 シャットが刃を閃かせ、嘲笑する。
「言ったでしょ、あんた、殺すって」
 パピヨンは噴水を背にしている。うまくいけば、この間と同じ手が使えるかも、と思ったが。
「同じ手は使えないわよ」
 と、シャットが空間を盗み、回り込んでくる。これまでも思っていたが、自分が盗んだ空間の中で、さらに空間を盗むなど、無茶もいいところだ。なぜなら……。
 シャットの刃をかわしながら、なんとか噴水から離されないようにするが、それに気をとられていることに、パピヨンは気づいていない。
 そう、うまく立ち回れば、間合いをとって、念装できたのだ。だが、早くケリをつけたいと思うあまり、そして、近くに「水」があり、以前、「それ」で勝利できたということにとらわれるあまり、彼女はそこまで思い至れない。
 シャットの刃が、パピヨンのブラウスを斬り裂いた。なんとか、皮膚に傷が付くことは防げたが、かわす際に体勢が乱れた。その隙を捉え、シャットが、跳び蹴りを食わせてくる。
 それを刀で防いだが、支えきれず、そのまま、後ろに倒された。
 更に、シャットが、剥き出しになったパピヨンの左胸を踏みつける。
 苦鳴を漏らしながら、パピヨンはその足首を固めようとした。しかし。
「……? これ、は……?」
 かすかに甘い匂いがする。
 そう感じたのもつかの間、パピヨンの意識が、霞(かすみ)に覆われたかのようになった。それに合わせ、体の力も抜けていく。
 シャットが哄笑した。
「盗んでおいたの、『笑気(しょうき)ガス』っていう、麻酔ガスのエッサンス!」
 麻酔ガス。まずいことになった、と思った。もし本当に麻酔性のガスだとしたら、数分間、場合によっては十数分間、思うように動けなくなる。
「十分(じゅっぷん)もあったら、あんた、裸にひん剥いて、ハラワタ引きずり出して、首を跳ね飛ばすぐらい、余裕よねえ」
 愉快そうにシャットが笑う。
 すぐ傍には噴水があるが、なんとかこの足から逃れて、噴水に飛び込んでも、それで、意識が覚醒するわけではない。
 シャットが、楽しそうに笑い、パピヨンを生まれたままの姿にしていった。
「あんた、いいカラダしてるわねえ。女の私でも、ゾクゾクするわ」
 どこか上気したような声と表情で、シャットは言った。
 もしかすると、シャットは、これからパピヨンをなぶり殺しにすることに、ある種の性的興奮を覚えているのかも知れない。
 どうにか、この局面を打開しなければ。
 そう思うが、体が思うように動かない。
 どうやら、シャットが笑気ガスのエッサンスを、断続的に、パピヨンに放射しているらしい。
 片膝を突き、パピヨンの頬を、左手で撫でながら、シャットが言った。
「さて。そろそろ、さばこうかしら?」
 凄惨な笑いを浮かべ、シャットが、刀の切っ先を、パピヨンの腹部に当てた。


(パピヨンは、ご機嫌ななめ cinq・了)


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