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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第40回 cinq−5
 警察官にとって、休日や祝祭日は、ない。
 日曜日の朝、鞠尾美砂子は、検討した資料を基に、県警捜査三課の早瀬(はやせ)警部に、自分なりの推測を話した。
 それを聞くと、早瀬は少し考え、こう言った。
「鞠尾さんの推測は、灰色ですらありません。ですが、調べる価値はあるかも知れません」
 その言葉に、美砂子はかすかな自信を感じ、頷いた。
 駐車場に向かいながら、美砂子は水島の問いに答えていた。
「警部補、僕、まだ、よく理解できないんですが。なんで、唐隅直彦と唐隅紅花の周辺を洗う必要があるんですか?」
「唐隅直彦の本籍は、館端市にあるけど、三ヶ月前まで、隣の県の供多實(ともたみ)市に住んでたの」
「え? 供多實市って、まさか」
 と、何かに気づいたらしい水島に頷いて美砂子は言った。
「『か−二百一号』が直近(ちょっきん)で盗みを働いたのが、二ヶ月前、供多實市で。さらに、紅花の現住所も、供多實市にある」
 それに一応頷いたものの、それでも水島は言った。
「それって、偶然なんじゃ?」
「それだけじゃないの。三ヶ月前、直彦が供多實市にいた頃、館端市で起きた窃盗事件が、おそらく『か−二百一号』によるもの」
「それが?」
「当時、調べててわかってたんだけど、三ヶ月前、窃盗にあった古美術商の邸宅を警備してた、警備保障のあの社員、アリバイがあるから捜査線上から消えたけど、事件後に会社を辞めて、隣の市に引っ越しているの。で、その警備員、かつて供多實市に住んでたみたい」
 立ち止まり、美砂子は言った。
「これは、あくまで、現時点での、私の推理。『か−二百一号』は、おそらく、かなりの組織犯。誰かが侵入対象の建物の鍵を入手し、連絡要員の人物に鍵を渡して、遠方で合い鍵を作らせる。そして、同じく遠方に住んでいる仲間が侵入し、窃盗を働く。もしかすると、三ヶ月前の館端市では、あの警備員が鍵を入手し、侵入したのは、唐隅直彦。二ヶ月前の供多實市では、鍵を入手したのは唐隅直彦で、侵入したのはあの警備員。連絡要員は唐隅紅花。こういう図式だったんじゃないかしら?」
 ちょっとだけ、考え、水島は苦笑する。
「いやいやいやいや。偶然でしょう? いくらなんでも」
「だから、それを確認するの! 唐隅直彦の職歴、これまで盗難被害に遭った民家・屋敷・邸宅・美術館、その警備関係者で、やめた者、クビになった者。全員を洗うのよ! もしかすると、もっと規模の大きい組織かもしれない。この県内でも、隣の県内でも、何件も発生してるしね」
「全員ですか!?」
 と、水島がギョッとなる。
 もし、唐隅紅花に対して、違和感を覚えなかったら、こういう方向性を見つけることはなかっただろう。これまでも経験してきたことだが、本当に、どこで何が、どのような繋がり方をしているか、わからない。
 水島がボヤくように言った。
「そういうのを無駄骨を折るっていうんじゃ……」
「捜査っていうのはね、無駄骨を、何本もへし折ってナンボなの!」
「それに、十日前の美術館。あれも、『か−二百一号』の可能性があるんでしょ? あの事件(ヤマ)じゃあ、まだ、防犯カメラの映像の謎が解けてないし……」
 美砂子は、水島の額を、右手の指ではたいた。
 やっぱり「ぺち」とかいう、情けない音しかしなかった。


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