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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第39回 cinq−4
「うまくごまかしてたな、お前。さすが泥棒」
 グランマルシェに着き、とりあえず、由梨は小物雑貨のテナントに行った。俺も誘われたんだが、興味ないので断ったんだ。なので、三十分後に服飾コーナーで待ち合わせることにした。
 川平は本屋へ行く、って言ってその場を立ち去り、由梨がいなくなった頃に俺のところに戻ってきた。
「まあね。盗んだエッサンスの情報とか、いろいろと確認しておいたから。そもそもこの『縁(えにし)』のエッサンスを盗んだときに、その居住地のことは、可能な限り、調べておいたから」
 よくわからんが、事前調査はしておいた、ってことだろう。
「それより。鞠尾くん」
 と、川平が真剣な顔になった。
 それがただ事じゃないような気がして、ちょっとだけ不安になった。
「なんだよ?」
 川平が俺をじっと見て、そして言った。
「もしかして、あなた、あたしのことが好き、とか?」
 う。
 なんか、こいつ、鋭いところあるな。
「さすが泥棒。いきなり訳のわからないことを言って、相手の虚を突くのがうまいな」
「泥棒は、この際、関係ないから。で、どうなの?」
 言おうかどうか迷ったが、いい機会かも知れない。
「お、おう。わ、悪いかよ?」
 俺がそう言うと、川平は「やっぱりか」なんてこと言って、考え込んだ。そして、
「ついてきて、正解」
 なんてことを言って、周囲を見回した。そして、右手の人差し指で何かを空間に描くような仕草をした。
 音が消えた。
 たくさんいたはずの人の姿が、まったくない。俺と川平の二人きりだ。
 何事か、と思った瞬間、川平が俺にキスしてきた。
 嬉しいというより、ビックリした。と同時に、川平の口伝いに「何か」が俺の中に流れ込んでくるのを感じた。
 いや、唾液とか、そんなエロいことじゃないぞ!? もっと、抽象的なものだ。うまく言えねえけど。
 川平が俺から離れる。
「また、今夜」
 川平がそんなことを言った直後、音が戻ってきた。
「じゃあ、あたし、本屋に行くから」
 そう言って、去って行く川平の背中を見ながら、俺は思っていた。
 今日、なんで、こいつは俺たちについてきたんだろう?
 ひょっとして、何か、盗むつもりなのか?
 だからと言って、俺にどうこうできるわけじゃない。
 俺、ただの高校生だし。
 監視しようかとも思ったが、相手は異世界人、何ができるわけじゃない。
 なので、俺はこいつに関しては無視を決め込むことにした。


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