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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第35回 quatre−8
 男は、ようやく念願が叶うことに、興奮していた。
 毎朝、バスの停留所で見かけるJK。いつも同じ男子高校生と一緒であるところ、そしてその男子高校生と親しいようだから、もしかしてカレシである可能性があるが、そんなことは関係ない。
 男にとって、ある日、本屋で本をとろうとした際に、そのJKと指がぶつかった。その時、カノジョがうつむき、お辞儀をして去って行った。
 それこそが全てなのだ。
 その日以来、時折、バス停で出会い、目が合うと、笑顔でお辞儀をしてくれる。
 つまり、一緒にいる男子高校生はただの友だちなのだ。
 いや、あるいは、カノジョはその男子につきまとわれて困っているのかも知れない。そこで、さりげなく笑顔をこちらに向けて、男に救いを求めているのかも知れない。
 そう思ったら、一刻も早く、カノジョを救わねばならないという「使命感」が涌(・)いてきた。そして、この夜、それが果たせるときが来たのだ。
 塾帰りと思(おぼ)しきカノジョは、最初は男に怯えていた。だが、それは、カノジョなりの「気遣い」だと、男は思った。だから、自分に対して、告白しやすいようにと、わざわざ、ひとけのない、近くの、崩れかけた廃ビルの中へ連れ込んだ。
 ビルに連れ込んだとき、カノジョは気絶した「振り」をした。
 きっと、面と向かって告白する勇気がもてないので、自分が「気を失っている振り」をしている間に、想いを遂げろ、ということなのだろう。
 男は、興奮が抑えられなくなった。
 ブラウスのボタンを丁寧に外し、はだけさせる。そして、ブラジャーをずらした。
 想像よりも大きい、白い隆起が現れた。それに感動とも扇情ともつかぬ興奮を覚えながら、グレンチェックのプリーツスカートを まくり上げる。
 白いショーツを見た瞬間、男の頭の中で、何かが爆(は)ぜた。
 ショーツを無(ぶ)遠慮(えんりょ)に引き下ろしたとき。
 硬質の足音が耳に届いた。
 その音に、男が我に返り、頭(こうべ)を振り向ける。
 十メートルほどの先、ビルの外にいたのは、月光に照らされた青い影。
 着ているのは鎧兜(よろいかぶと)だが、そのデザインは西洋風、いや、SF的だった。
 コスプレだ、と男は思った。
 影が、腰の剣を抜く。時代劇でよく見るような、打刀(うちがたな)と呼ばれる刀のようだ。
 その刀を影が構えたとき、月光を反射した六十センチほどの刀身が、一瞬で一メートル以上に伸びた。
 どんなギミックだろうと、男が思ったとき、その影が、まるで男との間(あいだ)にある空間を、盗んだかのような速さで、目の前に現れた。
 狼(おおかみ)を思わせる青き兜を被った影が、刀を振り下ろしたところで、男の意識が消滅した。

 空間を盗み、パピヨンはある廃ビルまでやって来た。
 このビルは、吾妻由梨の自宅と、彼女が通う塾との間にある。だが、この中(・)にまで彼女が入る理由が見当たらない。
 何らかの異常事態が発生しているとしか思えない。
 念装しようと仮面を出したとき、廃ビルから、青い影が現れた。
 その青い影は、吾妻由梨を抱えている。
 青い影を見て、パピヨンは驚愕のあまり、念装を忘れ、呟いた。
「ルー・アジュール……。どうして、あなたが……?」
 そこにいたのは、パピヨンの世界のヴォラールの一人、青き狼……ルー・アジュールだった。


(パピヨンは、ご機嫌ななめ quatre・了)


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