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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第33回 quatre−6
 今日は、どうやら揺り戻しが起きたらしい。朝、学校へ行こうと思ったら、どういうわけか、反対方向へ行くバスに乗ってしまったのだ。気づいて慌てて違うバスに乗り直したつもりだったが、また、別の方向へ行くバスに乗ってしまった。
 仕方がないので、学校へは「病欠」の連絡を入れた。こちらへ来て盗んだ分の時間と空間は、返さねばならないので、ある程度の時間と空間は空費させられることになる。
「本当に面倒よね。でも、和磨はあたしの管理下にあるから、シャットにもコルボーにも手出しできないはず」
 夜、住居がある、旗琳の「名坂(なのさか)」というエリアに帰ってきた、結局、この日は、ほぼ一日かけて、揺り戻しが終わったあとも市内をぐるぐると回った。
「まあ、それなりに『収穫』もあったから、よしとするか」
 そう呟いたとき。
 音が消えた。
 振り返ると、七、八メートル先に、ヴォラールとしてのアルミュールをまとったシャットが立っている。
「しつっこいわねえ、あんた。また、あたしの命を狙いに来たの?」
 呆れたその言葉に、シャットが嘲笑で答える。
「それは、また今度。今日はね、ちょっと面白くないことがあったから、その腹いせに来たの」
 この女の行動原理が理解できない。「腹いせに襲いに来た」など、正気とは思えない。
「あんたさ、一度、精密検査、受けた方がいいわよ? 脳の辺りとか?」
 その言葉に、シャットが不機嫌そうに言った。
「うるっさいわねえ! 制御がうまくいかなかったのよ! やっぱり『心』を盗まないと、ダメなのかしら? でも、そっちの趣味ないし。催眠術の技能(スキル)、盗みたいけど行動可能半径内(・・・・・・・)に、そんな人間、いないし」
 意味不明なことを言って、不満げに鼻を鳴らす。
 前から思っていたが、このシャットという女、関わり合いにならない方がいいタイプの女かも知れない。
「とにかく! とりあえず、あんたを傷だらけのボロボロにしてやらないと、気が収まらないの!」
 そう言って、シャットは光の刀を出現させる。
「……ほんと、迷惑でめんどくさい女ねえ、あんた。男とか女とか、そんなの関係なく、友だち、いなくなるわよ?」
 パピヨンもそう応えると、右手に光る刃を出現させる。
 シャットが驚いて言った。
「パピヨン、それ……!?」
 シャットの反応に、ちょっとだけ愉快な気持ちになってパピヨンは言った。
「驚いた? 世の中にはね、道場を開いてないけど、免許皆伝並みの腕を持った人もいるの。これはそんな人から盗ませてもらった技能(スキル)よ」
 今日、市内を回っているときに、見つけた人物が持っている剣技だ。流派は「天然(てんねん)理心(りしん)流(りゅう)」だという。
「……盗んだばかりだから、十分使いこなせないけど、勝つ自信はある!」
 そう呟くと、踏み込み、距離を盗んで間合いを詰めた。だが、シャットもそれは予測していたらしい。斬り込んだのとほぼ同じタイミングで刀を受け流すと、身をかわし、間合いをとる。
 パピヨンも、相手の行動をある程度予測していた。要するに、シャットに間合いをとらせるようにして、念装をする時間を稼ぎたかったのだ。
 シャットが、舌打ちをする。


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