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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第32回 quatre−5
 また、同じ言葉が出たが、それ以外に言葉が見つからない。
「一件目は、私立探偵だったんですが。捜査の過程で、ある女性が浮かびましてね。その探偵の元カノという女性なんですが。名前も顔も違うんですが、特徴っていうか、雰囲気がどうも白根さんに一致するらしいんですよ。あと、二件目は、これは倒れてきたらしい鉄骨資材の下敷きになっていたせいで、頭部が潰れているせいもあって、まだ身元が特定できていないんですが、一人暮らししてる、ある剣道場の師範じゃないかっていう情報がありましてね。ただ、その証言者から『白根さんはそこの道場の師範と、同じ腕前らしい』っていう話を聞きましてね。まあ、二件目のヤツは、その証言した人も、首を傾げながら、『そんな感じがする』というだけなんですが」
「……本当に、なんなの、それ?」
「本当に訳がわからなくて。その人の話だと、館端高校で見かけたときに、道場の師範と同じような人だ、って思っちゃったらしいんですが。なんでそんな風に思ってしまったかは、その人にもわからないそうですが」
 これまでも難解な事件に当たることはあった。だが、ここまで「わからない」「そんな気がする」といったワードにつきまとわれるようなことはなかった。
 一体、何が起きているのか。
「まあ、とりあえず、調べはしますけどね、その白根って人のことは。一件目の事件に関わっている可能性があるんで」
 そう言って、沼田は、またコーヒーを含む。
 その時。
「ああ、ここにいましたか、警部補。行き違いですね」
 と、水島刑事の声がした。
「もらってきましたよ、唐隅直彦の戸籍と住民票」
 封筒を受け取り、コーヒー缶を自動販売機横の、黒いベンチソファの上に置くと、美砂子は封筒の中の書類に目を通した。
「……実際にいたのね、紅花っていう妹さん」
 ちょっと肩すかしを食った気分だ。
 だが、それでも、一通り、目を通す。
 その目が、ある部分でとまった。
「……これって……。まさか……」
 美砂子の頭の中で、おぼろげに点と点が浮かぶ。
「僕もコーヒーでも飲もうかな」
 水島の声が聞こえたが、
「水島くん、来なさい!」
 美砂子は、そう声をかける。
「え? 僕、今、自動販売機にお金、入れたばっかなんですけど?」
 何か言いかけた水島を無視するように、美砂子は小走りになった。
「ちょ、ちょっと、待ってくださいよ、警部補!」
「水島、お前のコーヒー、俺が飲んどいてやるよ」
 そんな声を聞きながら、美砂子は走り出していた。
 もしかしたら、点と点が、線で繋がるかも知れない。
 そんな予感を感じながら。


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