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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第29回 quatre−2
 朝のホームルームを終え、廊下を歩きながら、シャットは思っていた。
 今日、パピヨンは欠席した。「病欠」の届けがあったそうだが、おそらくはこれまで盗んできた時間と空間の揺り戻しが来たのだろう。
 時間や空間を盗むときは、エッサンスではなく「そのもの」だ。だから、それなりのペナルティがある。
 なぜ、そのような仕組みになっているのか、はっきりとは、シャットにはわからない。ただ、漠然とだが、アカシックレコードを視ていて感じたことがある。
 時間と空間は、その世界全員が共有している。その中でさらに「限定的共有」「条件的共有」を行う者たちもいる。それらとなんらかのバッティングが起こった場合、それが平行関係にある世界の何らかの事情と絡んでくる場合がある。
 要するに、平行世界間での時間スピードに干渉する事になるのだ。シャットたちの世界を幹(みき)、ここの世界を枝(えだ)とした場合、シャットたちの世界の時間は進み、こちらの世界で短時間とはいえ時間が止まったとなると、その間の辻褄を合わせるために、ある特定の時間、時間スピードが歪み、そのしわ寄せが、盗んだヴォラールのところに来るのではないか、とシャットは思っている。
つまり、今日、パピヨンはその揺り戻しのために、学校に来たくとも、来られない事情が発生したのではないだろうか?
 例えば、止まっていた分の時間を取り戻そうと、こちらの世界が加速したとする。それはつまり、ヴォラールが盗んだ時間を返したことになる。そのため、そのヴォラールは、それだけの「時間」を失うことになる。
 あるいは、これは元の世界でのことだが、盗んだだけの時間を、「リアルタイム」で過ごせないことになるらしい。時間の帳尻を合わせるために、盗むことによって「余計」に過ごした時間を、ヴォラールは体験できないのだ。
 体感的には、そのヴォラールにとっては、五分程度しか経過していないと思っても、実際には半日経っていた、ということが起きる。あるいは、もっと直接的に、時間を消費するような出来事……例えば、急用だとか、何らかの事情でいつも使う道を通れないでいるうちに、遠方へと行ってしまう、だとか。
 シャットにも、覚えがある。だから、パピヨンにも、同じようなことが起きた、と考えたのだ。そうでなければ、自分(シャット)がいる学校で、監視の目を光らせないような「欠席」という事態を起こすはずがない。
 それならそれでいい。好都合かも知れない。その間(あいだ)、なんらかの「罠」を張っておくことも、「対策」を講じておくこともできる。
 そう、鞠尾和磨はパピヨンの管理下にあるから、その行動をコントロールすることはできないが、その相手である吾妻由梨の行動なら、ある程度、制御(せいぎょ)可能なはずだ。こちらの都合がいい場所で、鞠尾和磨に誘いをかけるように……「トレゾー」が出現するように仕向けることも可能ではないだろうか?
 そのための誘導の種を蒔(ま)く、絶好の機会かも知れない。


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