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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第28回 quatre−1
「そうだ、和磨(かずま)くん、聞いた?」
 朝、正門近くで、いきなり、由梨(ゆり)がそんなことを言った。
「なんだ?」
 こいつとは幼馴染みだし、家も隣同士だけど、クラスも違うし、女子ならではの情報網って奴もある。中間テストは終わったけど、来週には実力テストもあるし、ひょっとしたら、テスト範囲とかのヒントかも。
 そう、うちの高校、中間テストが終わったあとで、実力テストがあるんだよな。
 といっても、うちが極端な進学校ってわけじゃない。一年の時に聞いた噂だけど、ある種の「赤点対象者救済措置」なんだそうだ。だから、成績のいいものにとっては、自分の学習進度の確認、赤点対象者にとっては、これが事実上の補習テストになるらしい。
 だから、中間テストの成績が思わしくないものにとっては、この実力テストでそれなりの点が取れれば、実質的に赤点の補習が済むことになる。それって、実際のところ、
「一人一人で成績とか、授業で理解してないところとか、違うはずだけど、その辺、考えてるのかな? もしかして、ただ単に、補習する手間省いてるだけなんじゃ?」
 と思わなくもないんだが、補習となると、一定期間、放課後に居残りさせられて、最後に小テストがあるから、それよりは、な。
 まあ、実際のところはわからねえ。偏差値の底上げを考えてるっていう噂もあるから、案外、本当に、本格的な「進学校」になる準備かも知れない。
 まあ、この説明で、俺の中間テストの成績について、説明する必要はないんじゃないかな?
「保健室の先生、なんか、体壊して、入院しちゃったんだって。それで、来週から、臨時の先生が来るって」
 ……。
 実力テスト、全然、関係なかったな。
「そ、そうか」
「あれ? どうしたの、和磨くん? なんか、拍子抜けしたような顔してるけど?」
「なんでもないぞ、なんでも!」
「そう。……それでね、今度の日曜なんだけど」
 ……。
 話が関係ない方へ、急に変わりすぎ。
「日曜がどうかしたか?」
 いきなり話が変わって、ついてけないんだが、姉さんもそういうところがあるからな。少しは慣れてる。
「旗琳(きりん)の『グランマルシェ』で、サマーセールがあるの。一緒に来てくれる?」
 グランマルシェっていうのは、ここ館端(かんたん)市のデパートの一つだ。館端市は、東部の辰ヶ峰、南部の海面先(かいめんさき)、西部の白塔(はくとう)、中央部の旗琳(きりん)、俺が住んでたり館端市立高校があったりする北部の水津実(みづみ)にわかれる。グランマルシェは、旗琳に大きいのが一つ、辰ヶ峰に小規模のやつが一つある、この県を地場とした企業が経営しているデパートだ。
「どうせ、荷物持ちだろ?」
「そんなにお買い物できないよ。そうじゃなくてね? ……水着をね、見ておきたいんだ」
 由梨が上目遣いになる。
「……」
「和磨くんの意見も聞きたいなあって」
 由梨の頬に、紅が差す。
「……」
「それじゃあ、お昼休み、図書室前で待ってるね!」
「……おう」
 俺の頬も、熱くなった。


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