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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第26回 trois−11
 コルボーが笑顔を浮かべる。
「提案なのだが? おとなしく『トレゾー』から手を引いてはもらえないだろうか? 我は、君と戦いたくないのだ」
「だからさ、なんで、あんたが、今回の『トレゾー』を必要としてるわけ?」
 疑問を口にする。
「君だから、話そう。『鞠尾和磨が愛した女のヴァージン』があれば、ある女性に『神降ろし』をすることができる。本来、『彼女』はそのお役を担っていたのだが、お役を果たす前に鞠尾和磨にヴァージンを奪われてしまった。だが、『トレゾー』があれば、他の女性にその資格を与えることができる」
 と、コルボーが芝居がかった身振りを交えて言った。
「ところで、我の気持ちは、以前、伝えたのだが? どうだろう、我の『もの』になる気はないだろうか?」
「な・い・わ!」
 パピヨンは全身で拒絶した。コルボーが、また大げさに首を振ってから言った。
「仕方がない! だが、いずれ、君は誰かの『宝物』になる。そうすれば、君自身がトレゾーに指定されることになるだろう! そうなったときに、我は君を盗む。必ずね! その時を楽しみにしていたまえ!」
 そう言って、コルボーは宙に舞い上がり、去って行った。

 パピヨンは、和磨の家まで行った。シャットが和磨の家の周辺や、周辺人物のまわりをいろいろと調べた形跡はあった。だが、もしかしたら、コルボーも調査を行っている可能性がある。そのチェックを行い、対策を練る必要があるかどうか、改めて検討しなければならない。それに、もう一つ、大事な用事もあった。
 家の前まで行くと、和磨が誰かと別れるところだった。若い女だ。
「そうか。うまくいったか。とりあえず、今日、『トレゾー』が現れる事態は防げた訳ね」
 その女が見えなくなったところで、パピヨンは、和磨の前に行った。
「ああ、川平か……って! お前、なんてカッコウしてんだよ!?」
 和磨がうろたえた。
「え?」
 その言葉に、パピヨンは自分の格好を改めて見た。
 スカートは切り開かれて、ショーツが丸見え、ブラウスの前が裂け、さらに一部が破れていて、左の乳房が剥き出しになっている。
 念装をしている間に、どうやら服が破れたことを失念してしまっていたようだ。
 慌てて隠す。顔が熱くなった。シャットが味わったのは、肉体的熱さだが、自分のこれは、そういう次元のものではない。それに。
 自分はこんな格好でここまで来たのだ。「ひとけ」を盗むのを忘れていたから、おそらく通行人には、認識されただろう。記憶にある限り、一人も出会わなかったが、あくまで「こちらから、見かけなかった」だけの話。ひょっとすると、どこか、自分が感知できない位置から、見られていたかも知れない。
 真(ま)っ裸(ぱ)で帰って行ったシャットのことを笑えない。あとで、目撃者がいたかどうか確かめ、その記憶を盗まなければならない。「トレゾー」を手に入れて、この世界を去るまで、盗み続けることになるだろうが、そして「そのもの」を盗むわけだから、なんらかの「揺り戻し」があるだろうが、それぐらいの労は厭(いと)っていられない。
 時間と空間を盗もうかとも思ったが、それはやめ、掌(てのひら)に仮面を出現させて念装する。
 訝しげな顔をしている和磨の頭を両手で挟み、キスをして、心を盗む。
 そして、その場をあとにした。


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