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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第24回 trois−9
「わたし、もうヴァージンじゃないもの。いくら『エッサンス』を盗んだからって、身長とか年齢とか、根本的な身体情報が変化するわけじゃないしね。大体、それじゃ、『トレゾー』には、ならないでしょ? バカじゃないの、あんた?」
 そう言って、刀を弄ぶように刃を閃かせる。
「パピヨン。あんた、最初は自分が『鞠尾(まりお)和磨(かずま)が愛した女』になるつもりだったでしょ? そして、あんた自身のヴァージンを奪わせ、そのあとで、『トレゾー』となった、鞠尾和磨の中にある『鞠尾和磨が、愛した女から奪ったと自覚のある、ヴァージン』を盗むつもりだった。でも、『そこ』にはもう、吾妻(あがつま)由梨(ゆり)がいたものねえ。だから、あんた、吾妻由梨の『エッサンス』を借りた。うまくいけば、自分の方に、好意を向けさせることができるかも知れないって思って。でもね?」
 と、再び、シャットは嘲笑する。
「鞠尾和磨が、吾妻由梨の容姿だけに惹かれていたのなら、あたしたちの世界の鞠尾和磨も、あたしたちの世界の吾妻由梨と結婚したはずでしょ? でも、そうじゃない。それぐらい、わからなかったのかしら?」
 反論はしない。自分にもわかっているから。今は、相手の油断を誘うことが先決だ。だから、別の方向へ話を持っていって、注意を逸らし続けよう。
「シャット、『あの人』が欲しいのは、『鞠尾和磨が愛した女のヴァージン』だけじゃないのよ? それは、ほんの一部でしかない!」
「あらまあ。どこまでおめでたいのかしら? あれが『トレゾー』になったってことは、『あの人』がそれを目当てにしているのが……『鞠尾和磨に、とられた』のを悔しく思っているのが、丸わかりじゃない! それにその『トレゾー』を狙ってるってことは、あんたも薄々気づいているんじゃないの、『あの人』が欲しいのは、やっぱり『あの女』のヴァージンなんだって?」
 と、相変わらず、蔑(さげす)んだ笑みで、シャットは言う。
「トレゾー」とは、そんなものじゃない! そう、反論したくはあったが、それを脇に置いて、パピヨンは言った。
「あんた、さっき言ったわよね? 根本的な身体情報は変わらないって。だったら、『トレゾー』を手に入れたって、あんたが『鞠尾和磨が愛した女のヴァージン』になるわけじゃない。無意味なのよ!」
 その言葉に、一瞬、きょとんとなってから、シャットは哄笑した。
「あんたが、ここまでバカだとは思わなかったわ! その『トレゾー』があったら、実際はともかく『あの人』にとって、わたしが『そういう属性』を持ってる女、って感じてもらえるじゃない! それに、そんな『誘導』には、ひっかからない。あの『トレゾー』、絶対に手に入れるんだから」
 シャットの様子を見るに、どうやら、今の話の間に、パピヨンが少しずつ体勢を変えていたことに、彼女は気づいていないらしい。なので。
「『あの人』は、そんな人じゃないわ」
 そう言って、下半身のバネをきかせ、右足のつま先をシャットの左脇腹に突き込んだ。
 なんとも形容しがたい悲鳴を上げて、シャットが身をよじらせる。その隙に、シャットの下から抜け出すと、背後に回り込み、渾身の力で抱え上げ、体(たい)をひねって、人工池へと、シャットを放り込んだ!


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