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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第23回 trois−8
 着いたところは、小学校だ。まだ空間と時間は盗まれたまま。随分と、長い時間、盗んでいるようだ。
 ということは。
「どうあっても、あたしを始末するつもりね?」
 そう言ったとき、返答があった。
「覚えがあるでしょ?」
 振り返ると、刀を手にしたシャット。
「あんたには、いろいろとトレゾーを横取りされたものねえ」
「お互い様じゃない。何を今さら」
 その言葉に、シャットのマスクの奥の目が、けわしいものになる。
「譲れないもの、っていうものもあるの。わかるでしょ?」
 パピヨンにも覚えがあるので、十分(じゅうぶん)すぎるほどわかるが、ここは、そらとぼけておくことにする。
「『早い者勝ち』って言葉、知ってる?」
 シャットが刀を八相に構える。その時、シャットの向こうに、ビオトープ様(よう)の人工池が見えた。
 あることが閃いた。
 だが、次の瞬間、シャットが斬り込んできた。一刀両断にする構えだ。それをかわすと、シャットはそれを見越していたのだろう、刀を振り下ろす勢いを殺さないまま、体をひねり、刃を下から上へと跳ね上げる。念装の防護力があるので、そう簡単に斬られることはないだろうが、それでも、パピヨンにダメージを与えるには十分だ。咄嗟に左腕を盾にしたが、体勢が崩れた。
 すかさず、シャットがパピヨンを蹴り飛ばした。背中から地面に倒れたパピヨンの右胸を、シャットの左足が踏みつけた。
 痛みと息苦しさが襲い、苦鳴を上げながら、シャットの左足を両手で掴むパピヨンに、シャットは嘲笑を浴びせた。
「さあ、お遊びはもうおしまい」
 左足をパピヨンの右胸の肉にねじり込みながら、シャットが刀を構える。
「ねえ」
 と、苦しい息のもと、パピヨンは言った。
「一つ、聞きたいんだけど」
「……。そうね。殺す前に、命乞いぐらい、聞くだけは聞いてあげる」
 その口もとは、嘲(あざけ)りの形に歪んでいた。
 それを見て、パピヨンは時間稼ぎが成功することを確信した。
「もし、あたしが、吾妻由梨の『エッサンス』を借りていなかったら、あなた、彼女を殺して、その『エッサンス』を盗んだ?」
「……。そんなことはしないわ。だって」
 と、シャットは、鼻で嗤った。


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