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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第22回 trois−7
 シャットが刀を構える。八相の構えだ。そして、そのまま、仕掛けてくる。その動きは「八相(はっそう)発破(はっぱ)」をもとにしたもののようだ。
 どうやら、シャットは、こちらの命を狙っているらしい。
 それをかわしきれず、ブラウスとスカートの前が斬り裂かれた。
 下着が露出したが、気にしている場合ではない。
 彼女も念装(ねんそう)……変身をしたいところだが、それだけの余裕をくれるかどうか。
 パピヨンは、バックステップで間合いをとり、身をひねって走り出した。市の中央エリア、旗琳(きりん)に、陸上の女性アスリートが住んでいるが、彼女の技能を盗んでおいてよかった。距離と時間を稼いで、念装を……と思ったとき、目の前にシャットが現れた。
 感覚でわかる。盗んだ空間内で、さらに空間……距離を盗んだのだ。
 振り下ろされた刃を、野生動物の勘といってもいいタイミングでかわしたが、また、服が切り裂かれた。今度は左のカップも斬られたが、同時に、乳房にも、紅い筋が浮かんだ。
 身をひねったが、その弾みで壁に背を強く打ち付けた。
 だが、痛みは一瞬のこと、パピヨンはすぐに体勢を整えて走り出した。
 彼女たちは、こちらの世界と時間スピードが違う世界の人間なのだ。だから、こちらでは数分程度、持続する痛みでも、彼女たちの世界では、ほんの一瞬のこと。どうやら彼女たちは、原則的に「元いた世界」の時間スピードに支配されているらしい。理由は、彼女たちにもわからないが、「こっちの世界」に自分と同じ存在がいないことも一因であるらしい。
 胸についた傷も、この程度なら一日もあれば、あとさえ残さず完治するだろう。
 走りながら、パピヨンはジャケットを脱いだ。そして、それを構える。
 一瞬、前に現れるかと思ったが、シャットの性格を考え、彼女は振り向いた。案の定、刀を上段に構えたシャットがいる。おそらく、踏み込みの勢いで斬りつけようとしているところなのだろう。
 考えるより早く、パピヨンはシャットの懐に飛び込み、ジャケットをシャットの顔にかぶせた。そして、すばやく背後に回り込み、ジャケットの袖部分を結ぶように絞り上げる。
 シャットが体勢を崩した。その隙に、パピヨンはシャットの背中、両方の肩甲骨の間に右の拳(こぶし)を打ち込んだ。以前、盗んだ際に、習得しておいた技能だ。もっとも、彼女の今の身体能力に応じた威力しかないが、それでも一時的に動きを封じることはできる。
 うめき声を上げて、シャットの動きが止まる。そして、パピヨンは走り出し、右手に念装用のアイテム……蝶の仮面を出現させた。


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