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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第20回 trois−5
 学校帰り、パピヨンは、いつものように、「使えそうな」ものの「エッサンス」を探し、また、盗んでいた。ものによっては、ある程度「力」を使わねばならないため、「装備」に身を包まねばならないが、目星をつけておくのも、無駄にはならない。
 今夜は、我妻由梨には予定はない。下手をすると「トレゾー」が現れてしまう可能性も、なくはないが、由梨は「そのような」女の子ではない。それは、彼女の「エッサンス」を借りているときに、よく理解した。
 だが、どんなことにも不測の事態は起こりうる。だから、念のため、「保険」をかけておいた。
 その「保険」には、かなりの無理をしたから、いわゆる「揺り戻し」が起こるだろう。どういう形になるかはわからないが。
「『エッサンス』じゃなくて、本来、『その予定にない』人の行動そのものを盗んじゃったから、先の方であたしが、『急な予定』で動けなくなる可能性が高いけど。……それでも、危険性は潰しておかないとね」
 そう呟き、パピヨンは、大通りから、裏通りへと続く小径(こみち)に入った。
 その瞬間、音が消えた。
 時間と空間を盗む。それは、「この次元」の「外側」にいる人間に可能なことだ。そして、今、その技能を持った者は三人。
「この臭いは……!」
 振り返ると、そこにいたのは、白いハイレグのレオタードに、肘上の白いロンググローブ、膝上の白いロングブーツ、猫を思わせる、白いマスクを被った女だ。
 女は、露出した口を歪めた。まるで、嘲笑するように。
「あんた、無茶するわねえ。『エッサンス』じゃなく、『そのもの』を盗むなんて。反動が怖くないの?」
「それ言ったら、あなたのやってることこそ、ルール違反なんじゃないの、シャット・ブラン!?」
「お生憎(あいにく)様。わたしは、『融合後』の世界に存在し得ない人間しか、手にかけないもの。矛盾は生じないわ」
「そんなこと、言ってんじゃないのよ!!」
 理不尽なものに対する、怒りが湧いてくる。確かに、二つの世界で、存在する人・ものに違いのあることが普通だ。だが、融合する際、それらも「辻褄合わせ」によって、存続できるのだ。
 例えば、パピヨンは、彼女の世界では「川平(かわひら) 煌(こう)」として存在するが、こちらの世界には、該当する人間はいない。また、ヴォラールは、そのような人間の中から、非常にまれな確率で、生まれてくる。
 この状態で二つの世界が融合したとき、「川平煌」は、二つの世界間で「矛盾しない」形で存在することになる。
 ただし、その場合、若干、「変更」が加わる。それは例えば、「『川平』という家の、最近になって明らかになった縁者(えんじゃ)」であるとか、「親が離婚・再婚などして『川平』になった『煌』という少女」であるとか。
 いずれにせよ、融合後も、その存在は担保されるのだ。
 そもそも「存在し得ない」人間など、ただの一人もいないし、いてはならない。
「パピヨン、何、熱くなってるの? ……まあ、たまには『存在する』人間も殺すけど、融合したら、結局『いないこと、いなかったこと』になるんだもの。同じことだわ」
 シャットは、歪みきった笑いを口もとに浮かべる。
「お喋りは、このぐらいにしましょ。時間と空間って、長いこと、盗んでいられるものじゃない。あんたも、知ってるでしょ?」
 そして、右手を天に掲げ、振り下ろす。その手に現れたのは、刀の形をした光。
 館端市の東部エリア、辰ヶ峰(たつがみね)で剣道場の師範をしている人間が殺され、その「エッサンス」が盗まれた。その流派は「直心影流(じきしんかげりゅう)」だという。
 実はパピヨンも、その技能(スキル)が欲しくて赴いたのだが、すでに殺され、「エッサンス」が盗まれたあとだったのだ。


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アクセス: 2021