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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第19回 trois−4
 夕方の六時頃だ。
 いつもは七時ぐれえに帰ってくるんだが、今日は、この時間に家に帰ってきた。……今日は、由梨、部活も塾がない日だからな。お詫びもかねて、カラオケとかに誘ったんだ。
 なんのことかって?
 理由は自分でもわからねえんだけどさ、今朝、せっかく由梨が作ってくれた弁当、断っちまったんだよな。その時、寂しそうな顔をしてたし、それに。
 俺も、由梨に嫌われたくねえしさ。
 もちろん、これぐらいのことで、嫌われたりはしねえと思うけど、なんていうか、不安なところもあってさ。
 ……漠然と、なんだけど、俺と由梨に、将来、致命的な「何か」が起きそうな気がしてるんだ。
 家に入って、鞄とか部屋に置いて、コーヒーでも飲もうかと台所に行ったとき。
 インターフォンが鳴った。
 画面を確認すると。
「あれ? 沢渡(さわたり)さん?」
 玄関ドアの前にいるのは、行きつけの、俺が通ってた中学校の近くにある、本屋の娘さん、沢渡(さわたり)美春(みはる)さんだ。
 今年、十九歳の大学生。ちなみに、中学時代の一時期、彼女はいわゆる「憧れのお姉さん」だった。当時、定期購読している漫画雑誌とかあって、時々、うちにまで持ってきてくれることがあったから、俺の家は知ってる。
 でも、今はその雑誌、定期購読してねえし、そもそも本屋と常連以上の何ものでもなかったし。
 なんだろ?
「どうしたんスか、沢渡さん?」
『うん。なんていうか、鞠尾くんのところに行かなきゃって思っちゃって。あと、今日の予定、おかしな形で、そう、まるで、誰かに盗まれたみたいに、急にキャンセルになっちゃってね』
「なんですか、それ?」
 おかしな言い方をする人だな?
 彼女にも納得がいってないのか、首を傾げながら、言った。
『私にも、何が何だか、さっぱり。確かに、今日、サークルのメンバーで食事する約束してたのに、スケジュール確認したら、一週間後だったの』
「……勘違いなんじゃないんですか?」
『それはないなあ。だって、一昨日も、会場の居酒屋と、確認の連絡したもん。そもそも、私、幹事だし』
 と、また不思議そうに首を傾げる。しかし。
『ねえ、よかったら、ちょっとつきあってくれないかな、カラオケとか』
「え? カラオケ、ですか?」
『うん。なんかさ、君と、はしゃぎたい気分なの』
 つくづく、おかしな人だな、この人? 昔の一時期、ちょっと交流があったから、そんで、予定が急にキャンセルになったからっていう理由で、カラオケとかに誘うかなあ、普通?
「まさか、ヴォラール?」
 ふと、そんな感じがしたけど、何か違うような感じがする。うまく言えねえけど、今の俺、ヴォラールっていう連中のことがなんとなく見分けられるような気がしてるんだ。
 絶対かって言われると、そんな自信はないし、もっと言ったら、今日の……そう、今日の午前中あたりから、急速にそんな認識力が弱くなってる感じはするんだが。
『ねえ、いいじゃない。行きましょ? おごるから、さ』
 ちょっと考えて、俺は行くことにした。


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