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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第18回 trois−3
 一時間目の休み時間、俺は川平の席まで行った。
「なあ、川平」
「なに?」
 こいつ、なんか知らんが、いつも不機嫌そうな顔してるよな。
 だが、それにめげず、俺は言った。
「あのさ。もし約束とかなかったら、今日の昼、一緒に食わねえか?」
 俺の言葉に、川平は不思議そうに首を傾げた。
「なんで? 吾妻(あがつま)さんとお弁当、一緒に食べないの? それとも、冷やかされるのが恥ずかしいとか? 一週間かそこらしか、あなたたちのこと見てないけど、今さら、だわ」
 そして、鼻で笑う。
「いや、そういうんじゃなくて、さ。その」
 なんか、一世一代(いっせいちだい)の告白をするかのような気持ちだ。
 辺りを見回して、俺たちに注意を向けてる奴がいねえのを確認して、俺は言った。
「俺、さ。お前と、昼メシが食いたくて」
 とりあえず、今は、これだけ言っておく。ていうか、これ以上は言えねえ!
 しばらくは俺の言った言葉の意味を探るかのように、宙に視線を投げていたが、川平は何かに気づいたように目を見開くと。
「まさか! ちょっと、こっちに来て!」
 と、俺の手を引き、廊下へと出た。そして、右手の指で空中に何かを描く仕草をした。
 次の瞬間、音が消えた。
「時間と空間を盗むのって、かなりの容量を食うの。『揺り戻し』も怖いし。だから、あまり、長いこと盗んでいられない。単刀直入に聞くわね? あなた、もしかして、あたしのことが好きになっちゃった?」
 う。
 恥ずかしさの余り、思わず否定しそうになったが、せっかくのチャンスだ。
「お、おう。わ、悪いかよ?」
 そう言うと、川平が、頭を抱えた。
「くああ! まさか、こんなに早く影響が出るなんてね!」
 そして、俺を睨む。
「二日が、リミットか……。四日程度は大丈夫と思ったんだけど。『耐性(たいせい)』がつくことを考えても三、四日といったところね」
 なんて、わけのわからんことを言って、いきなり、俺の頭を、両手で挟んだ。なにをするのかと思ったら、いきなり!
「……ン!?」
 キスしてきた。
 嬉しいというより、ビックリした。と同時に、川平の口伝いに「何か」が俺の中に流れ込んでくるのを感じた。
 いや、唾液とか、そんなエロいことじゃないぞ!? もっと、抽象的なものだ。うまく言えねえけど。
 川平が俺から離れる。
「あとで、また盗むから」
 そんなことを言って川平が教室に戻ったとき、音が戻ってきた。
 ちら、と教室を見ると、川平が自分の席に着くところだった。それを見て、俺は思った。
 やっぱり、うさんくさいっていうか、得体の知れねえ奴だ。関わり合いにならねえ方がいい。
 そもそも、俺の母さん、刑事だしな。息子の俺が犯罪者に関わり合いになるのはまずいだろ?


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