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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第16回 trois−1
「和磨くん、昨日なんだけど」
 と、朝、バス停から学校へ向かう途中で、由梨が言った。
「白根先生とすれ違った時に、なんか、変な臭(にお)いがしたの」
「変な匂(にお)い?」
 俺は、思わず、由梨を見た。
 ゆうべ、川平が話してくれたんだが、「トレゾー」に関わってくる「ヴォラール」っていう奴らは、何らかのカムフラージュをやるらしい。で、ヴォラールやトレゾーに何らかの「縁(えにし)」がある者は、そのカムフラージュの影響を、ある程度までだそうだが、受けないという。
 だから、俺には「パピヨン」となった川平の姿をはっきりと見ることができるし、「コルボー」っていうあの妙に芝居がかった女の姿も、はっきりと見ることができた。
 そして、シャットって奴が、こずえちゃんになりすましているのも、見破ることができた。
 言い換えると。
「こずえちゃん」に違和感を覚えている由梨も、カムフラージュの影響を、あまり受けてないってことになって、それは結局、由梨もヴォラール、あるいは「トレゾー」に関わりがある人間、てことになる!
 一体、何がどうなって、どんな事態が起ころうとしてるんだ!?
「なんの臭いかまでは、わからないんだけど」
 俺にも、あの「匂い」の正体までは、わからねえ。ただ、日常生活で、あまり嗅いだことのない匂い……いや、臭いなのは間違いねえけどな。
 そのうち、正門が見えてきた。
 由梨が笑顔になった。
「和磨くん。今日もお弁当(べんと)、作ってきたから!」
 ……。
「悪い。今日は、一人で食うわ」
「え?」
 由梨の表情が曇った。
「ああ、別に、お前の弁当が不味いってわけじゃねえんだ。ま、たまには、さ、一人で昼メシ食いたい時もあってさ」
 取り繕(つくろ)ったようなことを、取り繕ったような笑顔で俺は言った。
「そう。……じゃあ、お弁当(べんと)だけでも、あげるね」
「……いや、今日は、購買でパンでも買って、て、気分なんだ」
 由梨が寂しそうな顔になったが、それもすぐに笑顔になった。
「うん。わかった」
 そう言って、由梨は一足先に、正門を通って行った。
 悪いな、由梨。
 お前の気持ちは嬉しいけど。
 でも、迷惑なんだよ、お前のその気持ち。
 お前より気になる奴が、できちまったんだ、俺。


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