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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第15回 deux−6
 声からすると、若い女のようだ。
 川平が電柱から出た。
 俺も、後に続く。
 その人影は、赤いマントに赤い服、そして、赤い仮面をつけてた。川平よりも、髪が長い。その仮面は川平のものと違って、顔の上半分をおおうタイプのやつだ。確か、カシュネって、いったっけ?
 さらに、カシュネの鼻の部分、とがっていて、鳥のくちばしに見える。
「こんばんは、コルボー・ルージュ」
 勝ち気な声でパピヨンがそう言うと、コルボーって呼ばれた女が、また大げさな身振りで言った。
「今宵、雲に隠れたる月は、我の吐息で赤くなっていることであろう。それを君と共に楽しめないのは、残念だよ、パピヨン。そして、初めまして、鞠尾(まりお)和磨(かずま)くん」
 こいつ、俺のことを知ってるのか?
 そう思って川平を見ると、川平が俺に頷いて、そして、赤い女に向いて言った。
「あなたが、彼が手に入れる『トレゾー』を欲しがるなんて、意味がわからないんだけど? この『トレゾー』、あなたが手に入れたって、使い道、ないんじゃない?」
 なるほど。何となく感じたけど、川平、あのコルボーって女を牽制(けんせい)してるのか。「使い道のないお宝を手に入れるのは無駄だから、とっとと、ここから消えろ」って。
 コルボーが、また芝居がかった動きと台詞で言った。
「おお! 人は、己の感性でしか、他者を理解できないものなのだなあ! ……君やシャットには、理解できない、使い道があるのだよ、その『トレゾー』には!」
「ふん。まあいいわ。とにかく、この『トレゾー』は、あたしのものだからね?」
「こう言っては、失礼だが? 君やシャットは、『あの人と結ばれたい』という、非常に利己的かつ矮小(わいしょう)な目的のために、その『トレゾー』を欲(ほっ)しているね?」
「ヴォラールって、そういうものでしょ?」
 コルボーが、また大げさに首を振り、溜息をついて言った。
「我なら、その『トレゾー』、有意義に使えるのだがねえ」
 こいつもまた、川平に「手を引け」って言ってんだろうなあ。
 一体、なんなんだ、俺が手に入れる「トレゾー」って?
 コルボーが、何かに気づいたように言った。
「悪いが、我は、これから一仕事せねばならぬ! 君とこれ以上、お喋りしている時間など、ないのだよ!」
 言うが早いか、空高くジャンプし、あっという間に博物館の中に入った。まるで溶け込むように!
「……あたしも、博物館に用があるのよね」
 苦り切った声でそう呟き、川平が歩き出した。
 俺もそのあとに続いた。
 俺は。
 なぜか、こいつと一緒なら、楽しい時間が過ごせそうだと思い始めていた。
 俺の母さん、先週から、県警の捜査三課に、なんかの理由(詳しく話してくれなかった)で出向してるけど、息子の俺が泥棒と関わり合いを持つのは、やっぱ、まずいよなあ。


(パピヨンは、ご機嫌ななめ deux・了)


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