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作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第13回 deux−4
「……で?」
「そういう風にして、時間スピードが変わって、その間に『辻褄合わせ』が起きる。今のケースで言うと、一時的にスピードが変わって、その間に、男女がフリーの状態になるの。君にも覚えがあるでしょ、ある日突然、奇跡のようなタイミングで、なにかの事態が変化することって?」
 ……。
 言われてみれば、そんなこともあったような気もする。
「昔からそんなことが積み重なっていくと、いつの間にか、同じ人間でも、片方の世界では二十七歳、片方では、まだ十六歳っていうことが起きる。だから、あたしの世界と、こちらとで、君の年齢が違うの」
 わかったような、わからないような。
「だから! 順当にいけば、来月、君の誕生日に『トレゾー』が現れるから! それが狂うとややこしいことになるから、生活スケジュールとか、君は、あたしに言われた通りにしなさい!」
「なにゆえに、お前に、生活まで管理されねばならんのか?」
 俺がそう言ったとき、予鈴が鳴った。
 ……まあ、いいか。なんか、こいつにいろいろと関わるのも、なんか楽しそうだな。こいつと同じ時間を過ごせるかと思うと、嬉しくなってくる。

 階段を降りながら、川平……パピヨンは思った。
 今の話、わざとわかりにくく話をしたから、和磨は、おそらく理解できていないだろう。というより、真実を理解されては困る。もし「本当のところ」を理解されてしまったら、予定通りに「トレゾー」が現れない可能性があるのだ。事実、「それ」を知ってしまった他の世界の和磨は、「トレゾー」を手にしなかった。
 いくら、全次元の根幹データベースである、アカシックレコードを視(み)ることができる「オイユ」を授かっているからといって、「トレゾー」が現れる世界を見極めるのは、困難な作業だ。せっかく見つけたのに、ここの和磨が「トレゾー」を手に入れなかったら、また一からやり直しになってしまう。
 そう。あまり「世界間の事情」に思いをいたされてしまうと、こっちの和磨が「トレゾー」を放棄する恐れさえある。そして。
 パピヨンの世界も、実は分岐した先の世界で、今、別の世界と融合する段階に入っている。融合完了がいつになるかわからないが、融合すると、彼女の「存在」が根本的に変わってしまう可能性すらあるのだ。
 それはそれで、幸せなことなのかも知れない。「本来、そうなる」という形へと動くのだから。
 だが、納得できるものではない。
 だから、そうなる前に「夢」を叶えたい。あの人と想いを通い合わせたい。
 そして、何より、「あの願い」を叶えたい。
 あがいてあがいて、あがきたい。
 とにかく。
 今は、「トレゾー」を手に入れる、そのことだけを考えよう。

 二年生の教室は、屋上のすぐ下、校舎三階にある。
 パピヨンと和磨は、二組の教室に入った。
「早く席に着きなさい」
 そんな声がした。どうやら、担任の白根が、もう来ているようだ。
「すみません」
 そう言ったとき、パピヨンは、白根の姿を見て、心臓が止まりそうになった。
 隣で、和磨が息を呑んだのがわかる。
「あのときの匂い……。それに、あいつ、こずえちゃんじゃない」
 そんなことを呟いている。
 和磨は今、パピヨンに心を盗まれて、彼女の管理対象になっている。だから、オンブル……カムフラージュのための影の影響を受けずに、自分たちを認識することができる。
 そう、彼女たちの前にいるのは、クラス担任の白根香澄恵ではないのだ。


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