小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:パピヨンは、ご機嫌ななめ 作者:ジン 竜珠

第11回 deux−2
 ホームルームが始まるまで、まだ十分ある。いつものように、適当にケータイいじってたら、クラスメイトの女子・川平(かわひら)煌(こう)が俺の机まで来た。
「ねえ。ちょっと話があるの。顔貸して」
 ちょっとばかりキツい顔立ちだと思うが、美人だ。だが、昨日まで、こいつの「顔」は、まったくの別人だった。ていうか、由梨そっくりだった。
 実は、こいつは異世界からやって来た、泥棒なのだ。
 詳しい話は省くが、こいつは俺たちの世界とは、パラレルな関係にある世界の住人で、「トレゾー」とかいうのを追って、俺の世界にやって来た。その「トレゾー」は、川平の世界に住む「俺」が持っているものなんだそうだが、なんかの理由でこっちの世界に来たらしい。で、それを手に入れるために、最初は由梨に化けて、俺の近くに来たが、今は、素顔になってる。
 由梨に化ける必要がなくなったから、らしい。
 こいつとは、なんか、本能のレベルで関わりたくないと感じてるんだが。
「わかった。どこへ行けばいい?」
 俺は、なぜか、こいつの話につきあってもいいかな、と思うようになってる。こいついわく、「俺の心を盗んだ」からだそうだが、今イチ、信じられねえ。こいつが、「人の心を平気で盗む」とか、そんな悪いことをするやつには、思えねえんだよ。だから、一種の催眠術じゃねえか、と、俺は思ってる。

 行った先は、屋上だ。
 誰もいねえ。
「『ひとけ』は盗んであるから、話を聞かれる心配は無いわ」
 と、わけのわからないことを言ってから、川平は手帳みたいなものを出した。
「ね。君の今夜のスケジュール、あたしにくれないかな?」
「は? なんだ、それ?」
「今夜、白塔(はくとう)の博物館に、忍び込むから」
 白塔っていうのは、俺たちが住む館端(かんたん)市の西部エリアだ。学校があったり、俺が住んでたりするのは、水津実(みづみ)っていって、市のほぼ北部。で、俺の住んでる辺りから白塔の博物館までは、バスで三十分ぐらいかかる。
「なんで、俺がつきあわないとならねえんだ?」
 率直に言った。なんで、泥棒の手伝いなんか!
「言ったわよね? あたしが感知してないときに『トレゾー』が現れるのは、御免被るって。実際に『トレゾー』が現れるのは、おそらく君の十七歳の誕生日で間違いないと思うけど、あたしの世界でそうだったからっていって、必ずしもこっちの世界でもそうとは限らないから!」
「ちょ、ちょっと待て! いろいろ、意味不明な言葉が出てきて、わけわからんのだが。その『トレゾー』が俺の十七の誕生日に現れる、とか、でも、必ずしもそうとは限らない、とか!」
 俺の言葉に、川平がちょっとだけ首を傾げる。そして。
「ホームルームまで、時間もないから、端折るけど。『あたしの世界での、君』が、その『トレゾー』を手に入れたのは、十七歳の誕生日だったの。でも、『あたしの世界での、君』は、『それ』を失ってしまった。しかし、それは平行世界に流れていった可能性がある。今、その可能性が、最も高いのが、『ここ』なの。わかるでしょ?」
「全っ然、わかんねえ! もっと、わかるように話せ。ていうか、お前の世界での俺が、もう十七歳になってるとか、わけがわからんのだが!」
 多分、俺のこめかみには、青筋が浮かんでるんじゃねえかな?


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 2014