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作品名:今日も杏とて。継 肆之章 作者:ジン 竜珠

第3回 肆之章・参
 頷くと、杏さんは意味ありげな笑みを浮かべて言った。
「『先生』いうのんはな? 学問を教える機械みたいなもんや。学校いうところは、学問を教える場所や。大体、生徒って、二十人も三十人もいてはるやんか。その人数の人間に、教師一人が、何ができますか? 勉強教えて、『ついで』に、他のことも教える。人間にそんな器用なことができる、思うのは、驕り高ぶりですえ? センセは、勉強だけ教えとったら、よろし! で、優秀な人間こさえて、お国のために頑張るのが、スジや!」
 その言葉に、さすがに、僕の頭に血が上った。この子は、なんにもわかってない! それに。
 僕の情熱を、全否定してる!
 思わず、僕は高い声で言った。
「君は、間違ってるよ! それなら、参考書だけ読んでればいいじゃないか!」
「参考書読むだけやと、わからんとこもあります。そこを補うんも、センセのお仕事や!」
「それが、間違ってるっていうんだよ! 確かに勉強を教えるのが、教師のつとめだけど! でも、それだけじゃないんだよ!」
「間違っとるのは、内木はんの方や。学問を教えて、優秀な頭、持った人材を育成して、お国のために尽くす。これが、教師の第一義やで?」
「君はなんにもわかってない!」
「内木はんこそ、なんもわかってまへんえ!」
 お互い、肩で息をしているのがわかる。気がつくと、僕も杏さんも、ソファから立ち上がっていた。
 眼鏡の子……珠璃ちゃんは、いつの間にか、自分のデスクに戻って、なんかの書類に目を通しているのが見えた。
 それがまるで「我、関せず」というより、「低次元の言い争いなどに関わりたくない」という態度に思えて、ちょっとだけ、僕の頭から熱が降りた。
 咳払いをして、僕は言った。
「とにかく。君のような考え方をしている人間が、この国をダメにしてるんだ。教師はもっと、積極的に生徒に関わり合って、正しい方へと導かないといけないんだよ!」
 これが僕の信念だ。
 それを聞いた杏さんが、また、意味深な笑みを浮かべた。
「ほな、内木はんは、生徒さんを正しい方へとお導きになれるんやなあ?」
「え? そ、それは……」
 どうなんだろう? 本当に僕は、生徒たちを正しい方へと導けるんだろうか?
 そう思っていると、杏さんが言った。何か企んでそうな笑みを浮かべて。
「それこそ、『驕り』というもんですえ? 自分こそが正しい、自分が絶対、自分の言うこと聞いとったら、間違いあらへん。こういう考えこそが、この国をダメにしとるんと違いますのん?」


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