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作品名:今日も杏とて。継 肆之章 作者:ジン 竜珠

第2回 肆之章・弐
「なんていうか、教師っていう仕事が、よくわからなくなってしまって」
「どんな対処をするべきか、検討するために、些細な話でも聞いておきたい」ということなので、僕はとりあえず、今抱えていることを話した。「お悩み相談」みたいだけど、問題に対応したパワーアイテムとかを調整する必要がある、のだそうだ。
「僕個人の考えとしては、勉強を教えることはもちろんだけど、生徒たちの心の問題も、なんとかするべきだと、思ってるんです。でも、生徒たちが何を考えているのか、さっぱりわからなくて」
 そう言うと、髪の長い子……杏さんが、朱色の親骨の、閉じた扇子を口元に当てる。そして、何か考えるように、僕を見た。
 ? 気のせいかな? 彼女の瞳、今、光ったような……。シトリンっていう石があるけど、あんな感じだった。
 ……気のせいだな。確かに、彼女の瞳、色素が薄いようだけど、光るなんてことがあるわけ……。
「あんなあ。内木はん、なんか勘違いなさってますえ?」
 そんなことを思っていたら、出し抜けに彼女が言った。
「え? 勘違い?」
「せや。生徒さんの心の問題とか、そんなん、スクールカウンセラーのお仕事や。ガッコのセンセのお仕事と、ちゃいます。それ以前に、子どものしつけは、親御さんとか、地域の問題や。なんで、センセが、そないなことせな、ならんの?」
 この言葉に、僕は反論せざるを得なかった。
「君、大学生ぐらいに見えるけど。学部は何かな?」
「ウチですか!?」
 そんな質問をされるとは思っていなかったのだろう。杏さんが、ちょっとだけうろたえたように見えた。
「ええと、ええと。そ、そう! ウチ、医学部です!」
「へええ。医学部なんだ。すごいんだね」
「へ、へえ。ウチ、優秀ですさかい」
 うわ。本当にいるんだ、自分で自分のことを「優秀」って言う人。ドラマとかじゃ、よく見るけど。
 きっと、こういう人は、人の心の動きになんか、そもそも興味を抱こうとは思わないんだろうな。ここに入ったのは失敗だった。
 確かに、スピリチュアルの方面の知識とか才能はあるんだろうけど、人間として大事な何かが欠如している人間の言葉なんか、信頼するに足るものじゃない。相手にするだけ時間の無駄というもの。
 やっぱり、適当なところで話を切り上げて、ここを出よう。でも、このことだけは言っておこう。
「いいかい、君。教育学部で教わるのは、教育論や学科だけじゃない。同じように、教師が教えることは、学問だけじゃないんだ」
「それは、驕(おご)りと違いますか?」
「驕り?」
 ちょっと、驚くような言葉が出てきた。


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