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作品名:今日も杏とて。継 肆之章 作者:ジン 竜珠

第1回 肆之章・壱
 スポーツの世界じゃあ、「二年目のジンクス」なんてのがあるけど。
 僕のような、教職の世界でも、そういうのがあるんだろうか?
 夢と希望を抱いて教師になったはずなのに、現実とのギャップがこんなにあるとは思わなかった。
 確かに、一時期よりは、学校の状況はマシになっているっていうけど。でも、僕には、生徒たちが……あいつらが理解できない。もう、同じ生き物とは思えない。
 先輩たちからは「ちゃんと向き合えばわかりあえる」っていわれたけど、そこまでいくのが、まず無理なんだ。だから、つい頭ごなしに叱って、問題になったりもしたんだ。

 ある日曜日のお昼。街を歩いていて、僕はあるものを見つけた。
「『スピリチュアル相談所 心域の砦』。スピリチュアルか」
 もしかしたら、パワーストーンとか、いいのが手に入るかも知れない。
 僕はそう思って、引き戸を開けた。
「あの、予約はしてないんですけど、いいですか?」
 そう言うと、中にいた髪の長い女の子が、柔らかい笑顔を浮かべ、僕を見て言った。
「内木(うちき)はんですなあ? お待ちしてましたえ」
 ……?
「あの。僕、予約の電話とかしてませんけど? なんで、僕の名前を知ってるんですか?」
 それに答えたのは、眼鏡をかけた女の子だ。
「こういう事務所なので。とりあえず、『こういうこと』は普通に起こる、とお考えください」
 そういうもんだろうか?
 僕は案内された相談スペースへ行き、ソファに腰掛けた。
「センセというご職業も、たいへんですなあ」
 ……。
 はっきり言って、怖い。こんな風に「何もかも見透かされている」ような感じって、日常じゃ、まず、ないから。
 もしかしたら、今から、帰った方がいいんじゃないだろうか?
 そう思ったとき、眼鏡をかけた子が言った。
「ご心配なさらず。プライバシーに踏み込んでいるわけじゃありませんので」
 髪の長い子も、
「お客様の中で『引っかかってる』何かを、ちょっとでも動かすために、ほんの少しばかり、外から力を加えているだけです。このぐらいのことをせんと、ウチらの外見(そとみ)だけで『なんや、小娘やん』ってお思いになる方が、ようさんいてますさかい」
 と、柔らかい笑みを浮かべる。その笑みは、どこか、僕を安心させるものだった。


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