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作品名:今日も杏とて。継 参之章 作者:ジン 竜珠

第4回 4
 正面玄関を出て、表通りに入り、レストランの方へと向かう。その時、一人の女の子の姿が目に入った。
 私から、二メートルぐらい、離れてるかな?
 腰まである長いストレートヘア、東洋的な面差し。……すっごい美人。着ている服はアイヴォリーのジャケットに、黒いシャツ、赤いネクタイに、バーバリーチェックのプリーツスカート。黒いオーバーニーのソックス。……あんな制服、この辺の高校にあったかしら? それに、今日はウィークデー。高校生だとしたら、学校抜け出したってこと。私だって、そこまではしなかったわよ?
 女の子は、穏やかな笑みを浮かべて、閉じた扇子を口元に当ててる。なんだろ? 私を見てるみたい。
 その時、私の背筋が凍った。
 あの子の瞳が光ってる! たとえじゃない、本当に光って見える! シトリンみたいだけど、ちょっと違う。喩えるなら……。
 そう、闇夜を追い払う、輝く朝陽のような色。
 ちょっと怖くなったとき、私の携帯が鳴った。
 でも、体が動かなくて、すぐには、電話に出ることができなかった。どうにか、女の子から視線を外して電話に出ると、それは、三沢さんからだった。
 今夜の、私の予定の確認だった。
 空いているので、食事の約束をして、通話を切ったとき、女の子の姿はなかった。

 いやあ、昨夜は、充実した一夜だったなあ。三沢さんって、仕事もできるし、谷さんには、もったいないイケメンだし。
 結婚、考えてもいいかも?
 社に来たら、なんだか様子がおかしい。
 なんだか、エントランスで人だかりができてる。
「なにか、あったの?」
 適当な人に話を聞いてみた。すると。
「……!? 自殺? 木島さんが?」
 私は、耳を疑った。企画事業課第二班の木島さんが、昨夜遅く、社が入っているテナントビルの屋上から、飛び降り自殺をしたというのだ!
「ちょ、ちょっと待って!? どういうこと?」
 私の言葉に応えたのは、本田さんだ。
「今朝、総務部長が話していたのを聞いたんですが。ゆうべ、木島さん、課長と何か口論してたらしいんです。それで、何を口論してたのか、社内相談室に、今、課長が呼ばれてて」
「社内相談室」っていうのは通称で、正式名称は「社内問題監督室」っていう。堅苦しいんで、みんな「社内相談室」って呼んでる。
 本当に何があったの?
 そんな風に思っていると、本田さんが真面目な顔になって言った。
「ごめんなさい、先輩。たった今から、わたし、先輩とは距離を置きたいんです」
「え? いきなり、なんなの?」
「わたし、先輩に利用されるだけなんて、いやなんです」
「ちょ、ちょっと! いつ、私があなたを利用したの!?」
「いつか、そうなる気がするから」
 そう言って、本田さんが私に背を向けて、去って行った。
 何だかわからないでいると、背後から三沢さんの声がした。


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