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作品名:今日も杏とて。継 参之章 作者:ジン 竜珠

第3回 参之章・参
 お昼休み。私は、いつも、宝條三丁目にあるレストラン「レゾン・デートル」へ行っている。会社からも近いし、お洒落だし。
 ブランド物のクラッチバッグを取りにロッカールームへ行ったとき。
「尾関さん!!」
 営業課第二班の谷(たに)さんの声がした。
 ……そうか。やっと気づいたか。
「なあに、谷(たに)さん?」
 私は、「普通」を装って、応えた。
「三沢(みさわ)さんに、何を言ったの!?」
 あらあら。「何を言ったの」ですって?
 バカなんじゃないの、この女! 気になる男を誘惑するのに、言うことなんて、「こっちとつきあった方がおトク」なメリットに決まってるじゃない。
 ただ。
 私の場合、谷さんの「よくないところ」を、ちょっとだけ、つけ加えたけど。あと、その「よくないところ」、ちょっとだけ、私の主観が入っているかも知れないけど?
 だから、
「言ったって? 何か言ったかしら、私?」
 と、とぼけてやった。
 案の定、谷さんが赤くなった。よく、怒ることを表現するのに「真っ赤になる」なんて言うけど、あれ、もののたとえだと思ってたわ。ほんとに、赤くなるんだ、耳とか。
「しらばっくれないで! よくも、あんなデタラメ!」
「デタラメ? そうかしら? 火のないところに煙は立たないっていうし」
 ウソ。火のないところに、しょっちゅう、立ってるのよ、煙って。
「あなたねえ!」
 谷さんがこっちへ近づいてきたとき。
「谷さん、そんなところに突っ立っていられると、ロッカー室に入れないんですけど?」
 私と同じ、企画事業課第一班の本田(ほんだ)さんだ。ついでに言うと、私と同じ大学の一個下の後輩。で、大学時代から、私のあとをついて回ってる。
 この子、なんていうか「嗅覚」が発達しているみたいで、私の近くにいたら、いろいろと「おこぼれ」に与(あずか)れることを知ってる。実際、大学時代から、それなりに「いい思い」してるしね。コンパで、狙った相手に「うまく」取り入ったり、バイト先で「うまく」シフトを調整したり。
 この会社に入ったのも、私がいるからだろうし。
 谷さんが何か言いかけたけど、そのまま、去って行った。
 フン。引っ込んでなさい、カス女!


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