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作品名:今日も杏とて。継 参之章 作者:ジン 竜珠

第2回 参之章・弐
「しかし」
 と、課長が急に真面目な顔になった。
「木島くんのプランは、確かによかった。あれを潰すのは、我が社にとって、損失になる、と思う」
「それなら、問題ないわ。提出すればいいのよ、来週の社内コンペで」
 課長が、心底、不思議そうな顔になった。
「え? でも、木島くんのプランを潰せって言ったのは、君じゃないか」
「だからぁ」
 と、私は課長の右の頬を、左の掌でゆっくりと撫でた。剃り残したヒゲが、ザラザラして、ついでに顔の脂がベタついて気持ちが悪いけど、我慢我慢。
「私の名前で出せば、いいのよ」
「え? でも、それじゃあ、木島くんのプランを盗んだことに……」
「何言ってるの。社のためでしょ? 修正して出せば、それで、すべて……」
「で、でも……」
 うろたえた顔が、カワイイ……。なんて、思うわけないわ! でも、ここで一押し。
「ねえ、いいでしょ? 私も、そろそろ欲しいの、実績が。課長も、優れたプランを出せる女子社員を育てた、ってなれば、今度の考課で、いい評価がもらえるんじゃないかしら?」
 あらあら、わかりやすいわねえ。また、目尻が下がってる。
「で、でも、木島くんが作成したことは、課のみんなが知ってるから」
「だから、部分的に修正するの。それを、木島さんよりも先に、私が提出していたことにしてくれたら」
 ダメ押しで課長の胸に右の指を這わせてやる。
 課長の鼻から、息がもれた。
 フッ。チョロいわね。
「ねえ、課長。さっきの続き」
 と、私は、両腕を課長の首に回した。そして、ちょっとだけ、口をとがらせてやる。まるで、何かをおねだりするように。
「し、しかし、尾関くん、もう十一時二十分……」
「正午まで、借りてるんでしょ、この会議室。誰も来やしないわよ」
「そ、そうか……?」
 課長の口が緩む。正直、その顔を見てるだけで、気持ち悪くなる。だいたい、私に相手してもらえるなんて、本気で信じてるのかしら? そうだとしたら、この男のオツム、相当、おめでたいわね。どうして、そこまで、うぬぼれられるのかしら? そもそも、この程度の男が「課長」になれるところからして、この会社も相当おかしいわね。
 課長の唇が、私の唇と重なる。……タバコとか、いろんな臭いがして、吐きそう。そして、課長の手が私の太ももを撫でる。「さっきの続き」だから、すぐに、スカートの中へ、その手が上ってくるだろう。
 我慢我慢。利用できる間は、利用し倒さないと。


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