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作品名:今日も杏とて。継 弐之章 作者:ジン 竜珠

第2回 弐之章・弐
 そういうのを利用するんだよ。例えば、「ある人に会いたい」って思ってるときに、たまたま、その人のいそうな場所の手がかりを得ることがある。そしてその手がかりによって、その人に会うことができる。
 一度、そういうことがあって、気にし始めたらこっちのもの。次は、その人間……ターゲットが「気にしている人間」が近くにいたら、ターゲットに「その人間」の名前を「囁いて」気にするようにさせ、そこで「その人間」に出会わせるように仕向ける。そういうのが積み重なっていけば、やがて「自分はこの人と、特別な縁がある」なんて、思い込んじまうんだな。
 そいつを使って、盛り上げるだけ盛り上げて、一気に落とす。その時にその人間が抱く絶望感が、たまらねえ。俺たちの生きる糧(かて)の一つだ。
 ちなみに、智夏子が想いを寄せている相手は、同じ会社の違う部署にいる林庸治(はやし ようじ)ってやつだ。イケメンってやつだ。結構、モテるが、二股かけてるわけでもない。誠実、てほどでもないが、不実でもない。ま、普通の人間だ。
 ただ、な? 庸治って、智夏子のことは全然、意識してねえ。それどころか、他につきあってる女がいる。女の希望で、周囲には伏せてるがな。
 ちなみに女が伏せてる理由だが、単純に「庸治とつきあっていることが知れると、自分が妬まれる」から、それを恐れてのことらしい。まあ、そのうち、その女も絶望の淵に落としてやるよ。ヒヒ。
 で、だな。智夏子をうまく誘導してやって、その気にさせて、庸治が智夏子とは恋愛関係になれないところを思い知らせてやるのさ。そうすれば、智夏子のやつ、絶望するしな。それで自ら命を絶ってくれたら、御の字だ。そこまでいかなくても、自暴自棄になってくれたら、それを引き金にして、どんどん落としてやる。
 実は、そこまではお膳立てをしてるんだ。これまでいろいろと「偶然」を演出してやってるから、とどめに今日、庸治がデートしてる現場に智夏子を誘導してやって、その時、庸治に致命的な言葉でも吐かせてやる予定になってる。
 智夏子のやつ、実は恋愛に重きを置いてるやつでさ、この恋に破れたら、どうなるか、俺にも見当はつかねえ。
 楽しみだ。
 智夏子が、あの女の事務所に行ったのは、おおかた、庸治と確実に結ばれるためのお守りなんかをもらいに来たんだろう。
 だが、それは叶わない。
 どうだ。
 あの髪の長い女に「自分は無力だ」って思い知らせて、おとしめるだけじゃなく、ターゲットだった智夏子も絶望させることもできる。一石二鳥だ。
 おっと。智夏子が出てきた。……なんか、不満そうだな? あの女、何か言ったのか? まさか、俺の計画を知って、邪魔したわけじゃねえだろうが。
 ん? 智夏子のやつ、なんか言ってるな。
「なんだろ、このお守り? 『恋が叶うお守り』じゃなくて、『泣きたくなったら、中のものを出して、紙に書いてあることを、声に出して読め』って、どういう意味? まあ、タダだったし、いいか」
 ふうん。お守りか。それにしても、妙なことをしやがるな。恋愛成就の依頼人に対して、「恋が叶うお守りじゃない」とか、正気じゃない。
 まあ、しばらくあの女を見てて思っていたんだが、ちょっと、変だしな、あの女。


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