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作品名:今日も杏とて。継 外傳之壱 作者:ジン 竜珠

第1回 外傳之壱・壱
 大型連休を控えた金曜日の放課後、生徒会本部へと向かう途中で、鬼城珠璃(きじょう じゅり)は、シャングリラの前で一人の女生徒に呼び止められた。
「あの、珠璃様」
 振り返ると、小柄な女子生徒。学年章から見るに、一年生だろう。
 しかし、珠璃には見覚えのない生徒だった。そんな女生徒から、いきなり「珠璃様」と声をかけられるのは、初めてではないが、それでも滅多にない。
 まるで、柴犬の子どものようだ。珠璃はそんな風に思った。
「どうしたんだい? ボクに何か用かな?」
 怯えているような雰囲気が漂うので、珠璃は優しく言ってみた。
 女子が顔を上げて珠璃を見上げたとき、珠璃の中にある「イメージ」が浮かんだ。
 この子は「珠璃」と「お昼寝」をしたがっているのか?
 この「お昼寝」が何を意味するのか、明確にはつかめない。だが、もしかしたら「あの行為」を婉曲的に、思い浮かべているのかも知れない。
 そんな女子は、これまでもいた。たいていは段階を経て、その「行為」に至るのだが、かつて最初のデートで、そこまで求めてくる女生徒がいたのも確かだ。
 珠璃は改めて、その女子を見た。
 自分より二十センチは低いようだ。だから、身長は百四十五センチ程度だろう。幼児体型とまではいわないが、小学校高学年といっても無理がない。
 今、珠璃は名実ともに、天宮竜輝の恋人として認知されている。それは昔からの夢であったし、それについて彼女は高揚感や充実感以上のものを感じている。
 だから、これまでのように「ハーレム」にこだわる必要はないかも知れないが。
「それはそれ、これはこれ、だよね」
「? なんのことですか、珠璃様?」
「なんでもないよ。それより、仔犬ちゃん、ボクに何か用事なんだよね?」
「仔犬ちゃん?」
 と、首を傾げた女子だったが、ふと、何かを考えるようにうつむいた。
 彼女が何を思っているか、珠璃の心に浮かんできた。
 明日あたり、デートがしたいらしい。明日は、今のところ、用事はない。事務所も休みだし、竜輝も別の用事が入っているので、珠璃の個人的スケジュールは空いていた。
 何か言おうとして顔を上げた女子だったが。
 珠璃の背後から女子の声がした。
「会長、もう全員、集まってますよ。会議、始めましょう」
 生徒会書記の女生徒だ。その女生徒を見た瞬間、下級生が頬を紅くした。単純に照れたらしい。第三者がいるところで珠璃をデートには誘えない。そう思ったようだ。いきなり、グラウンドの方へと駆け出してしまった。


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