なんだろう、この黄色い花が束のようについてるのは、アブラナかな? でも、ちょっと違う。葉っぱが大きい。 俺が絵をじっと見ていたからだろうか、受付のところにいた俺より三、四歳ぐらい年上の女性が、俺に話しかけてきた。 「この子の夢、新しいお野菜を作ることなんだそうですよ」 「え?」 その言葉に、俺は改めて絵を見た。確かに、絵の下に短冊のようなものがあって、「野菜の品しゅ改良をする技じゅつ者」と書いてある。小学四年生の女の子だ。 「じゃあ」 と、俺は、その女性に聞いた。 「これは、品種改良した野菜ですか?」 俺は黄色い花の咲いた草を差す。 「みたいなもの、ですね」 と、女性は絵の隣に貼られた、原稿用紙を示す。 「この作文によると、これは花が咲いても食べられるブロッコリーだそうですね」 俺も、その作文に目を通してみた。 『去年、家てい菜園に植えたブロッコリーが、葉っぱを虫に食べられて、ほとんどかれてしまいました。それでお父さんもお母さんも、全部かれたら、ぬこうねって言ってたけど、気がついたら葉っぱが元気にしげって、花が咲いていました。ブロッコリーは、かれてなかったみたいです。かれたと思ったのに、ふっかつしたのはすごいなあと思いました。でも花は食べられないそうなので、わたしは花が咲いても、その花も食べられるブロッコリーを作りたいです』 「へえ、ブロッコリーって、花が咲くんだ」 知らなかったな。 女性が頷き、笑顔で言った。 「植物って、たくましいんですよ。私の実家にバラがあるんですけど。そのバラ、一度、枯れてしまったんです。でも、いつの間にか芽が出て、気がついたら、また花が咲き乱れてたんです。私、そのバラを見て、思ったんです。夢を諦めちゃいけないな、て」 思わず、俺はその女性を見た。 俺の視線に気付いた女性が、慌てたように自分の口を両手で覆った。 「あら!? 私、なんで、こんな話を!?」 どうやら、無意識にバラの話をしてしまったらしい。 俺は適当に話を切り上げて、催事場をあとした。 「枯れた植物に、花が咲く……か」 俺は不思議な感覚が心に生まれるのを感じながら、一度、催事場の方を振り返った。 例の、長髪の女の子と、ショートヘアの女の子の姿もあった。二人で、絵を見ながら、何かを話している。 あの子たちも来てたんだな。
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