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作品名:今日も杏とて。継 壱之章 作者:ジン 竜珠

第3回 壱之章・参
 なんだろう、この黄色い花が束のようについてるのは、アブラナかな? でも、ちょっと違う。葉っぱが大きい。
 俺が絵をじっと見ていたからだろうか、受付のところにいた俺より三、四歳ぐらい年上の女性が、俺に話しかけてきた。
「この子の夢、新しいお野菜を作ることなんだそうですよ」
「え?」
 その言葉に、俺は改めて絵を見た。確かに、絵の下に短冊のようなものがあって、「野菜の品しゅ改良をする技じゅつ者」と書いてある。小学四年生の女の子だ。
「じゃあ」
 と、俺は、その女性に聞いた。
「これは、品種改良した野菜ですか?」
 俺は黄色い花の咲いた草を差す。
「みたいなもの、ですね」
 と、女性は絵の隣に貼られた、原稿用紙を示す。
「この作文によると、これは花が咲いても食べられるブロッコリーだそうですね」
 俺も、その作文に目を通してみた。
『去年、家てい菜園に植えたブロッコリーが、葉っぱを虫に食べられて、ほとんどかれてしまいました。それでお父さんもお母さんも、全部かれたら、ぬこうねって言ってたけど、気がついたら葉っぱが元気にしげって、花が咲いていました。ブロッコリーは、かれてなかったみたいです。かれたと思ったのに、ふっかつしたのはすごいなあと思いました。でも花は食べられないそうなので、わたしは花が咲いても、その花も食べられるブロッコリーを作りたいです』
「へえ、ブロッコリーって、花が咲くんだ」
 知らなかったな。
 女性が頷き、笑顔で言った。
「植物って、たくましいんですよ。私の実家にバラがあるんですけど。そのバラ、一度、枯れてしまったんです。でも、いつの間にか芽が出て、気がついたら、また花が咲き乱れてたんです。私、そのバラを見て、思ったんです。夢を諦めちゃいけないな、て」
 思わず、俺はその女性を見た。
 俺の視線に気付いた女性が、慌てたように自分の口を両手で覆った。
「あら!? 私、なんで、こんな話を!?」
 どうやら、無意識にバラの話をしてしまったらしい。
 俺は適当に話を切り上げて、催事場をあとした。
「枯れた植物に、花が咲く……か」
 俺は不思議な感覚が心に生まれるのを感じながら、一度、催事場の方を振り返った。
 例の、長髪の女の子と、ショートヘアの女の子の姿もあった。二人で、絵を見ながら、何かを話している。
 あの子たちも来てたんだな。


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