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作品名:今日も杏とて。継 壱之章 作者:ジン 竜珠

第1回 壱之章・壱
 もう、ダメだと思う。
 これでも頑張ってきたつもりだったんだ。大学を四年目で中退して、三年。いろんな「企画」なんかの仕事をしたくて、大学在学中も、いろいろやって来た。ツテを頼って、あるサイトの運営会社でバイトして、企画書を書いて、提出して。
 でも、まあ、ボツの連続で。
 今度のヤツはそこそこ自信があったんだけど、やっぱダメだった。
 ……最後の勝負だったんだよな。
 世の中、甘くないわ。
 もう、限界だし、潮時だ。
 俺は、企画がボツになって一ヶ月後、大型連休に入る前の日にバイトをやめることを告げ、故郷(くに)に帰ることにした。一ヶ月かかって、俺を支えていた「何か」が、ボッキリと折れちまった、と思ってくれ。

 で、だ。
 故郷に帰るには、新幹線を使わないとならなくて、で、俺が住んでる市には新幹線の駅がなくて。そこへアクセスするには、千京市にある大きな駅へ行って、そこから新幹線の駅がある街まで行かないとならない。
 俺、免許はあるけど、車もバイクも持ってないから。
 ある晴れた朝、俺は、荷物を抱え、地元の駅へと向かった。大きなものは、もう、業者に発送を頼んである。

 駅へ向かう途中だった。バスを待っていると、女の子たちの会話が耳に入ってきた。
「え? 忘れ物ですか?」
「そや。あのバッグ、置いてきてもうてん。取りに帰らな」
 何となく、声のする方を見た。そこにいたのは、眼鏡をかけたショートヘアの美少女と、髪の長い美女。二人とも高校生だろうか? 眼鏡をかけた方の子は、まあ、お洒落な服っていってもいいかな? よくわからないけどさ。で、髪の長い方の子は、クリームイエローのスウェットに、薄いブルーの、つなぎみたいな服を着てる。サロペット、とかいうんだっけ? でも、ズボンじゃなくて、ロングスカートだ。
 二人とも、かなりの美形だな。どこかの事務所のアイドルかな?
 見とれていると、俺も、ふと気がついた。
「バッグ……か」
 そういえば、バッグじゃねえけど、あの書類鞄、発送する荷物に入れるの、忘れてたな。バタバタしてたし、俺も落ち込んでて、注意してなかったんだろう。アパートのあの部屋に置いたままだ。置いといても、そのうち大家さんから連絡があるだろうけど。
 時間にはまだ余裕があるし、取りに帰ろう。あの鞄には、一ヶ月前にボツ喰らった、あの企画書が入っている。
 俺の最後の未練だ。せめて、俺の手で、葬ってやろう。
 故郷に帰って、最初にやるべき仕事ができたな。
 俺の未練を、火葬してやること。
 俺の、けじめだ。


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