小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:今日も杏とて。episode.7 作者:ジン 竜珠

第3回
 とりあえず、店内に彼女を案内して、僕は時計を作業台に置くことにした。といっても、僕は実際には修理はしないし、できない。いつ爺ちゃんが帰ってきてもいいように、準備をしておくだけだ。
 こんな時、やっぱり携帯は家族全員に持たせるべきだっていうのを実感する。
 そして、時計を置いたとき、ちょっとした違和感を感じた。なんていうか、中から異音がしたのだ。
 実際に開けてみないとわからないけど、多分、この感じは、中で何かが壊れてる。もしかしたら、ヒゲゼンマイあたりが折れているのかも知れない。
 僕が時計をじっと見ているのを奇異に思ったんだろう、女の子が近づいてきた。そして、申し訳なさそうに言った。
「実はな、故障の原因、わかってるんです」
「え?」
 なに、それ? 故障の原因がわかってる?
 僕の訝しげな視線に、女の子が、縮こまるようにして言った。
「親戚の、小学校に上がったばかりの子どもがいてましてな、その子が分解してしもたんです。親御さんが、すぐに組み直そとしてくれたんどすが、ちっこい歯車がな、一個、どこかに行ってしもてん」
「……なんだ、それは? 無料保証の対象外じゃないか! 難癖つけてるのか!?」
 思わず、声が大きくなってきた。
「すんまへん」
 と、女の子は頭を下げる。
「でもな、修理を急いでましてな。こちらの店主さんやったら、完璧に直せるんちゃうかな、って思たんや」
 呆れて物も言えない。クレーマーもいいとこじゃないか!
 僕が何か言おうとしたとき、彼女が、店にディスプレイしてある大時計を見て言った。
「時計、て、すごいなあ。ホンマ、精巧な機械や」
 ? 何、この子、いきなり、何を言い出したんだ?


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 123