小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:今日も杏とて。episode.7 作者:ジン 竜珠

第1回
「修時(しゅうじ)、そろそろ、店、閉めるか」
 爺ちゃんが、そんなことを言った。一応、閉店時間は午後七時ってことになってるんだが、こんな田舎町じゃあ、六時になったら、人通りがなくなるといってもいい。
 大学を卒業して、都会の有名企業に就職した。県庁所在地じゃないけど、大都市といってもいい、千京市にある、「ドリーム・プリペア」っていう会社だ。大企業「ミハシラ」の系列になるイベント企画会社だけど、なんていうか、ちょっと雰囲気が違う。
 一口で言うと、小規模なことばかりやっている。どこかの地方公共団体の行事手伝いとか、学校の行事の手伝いとか。
 僕としては一流アーティストのファンミーティングとか、アスリートの講演とか。そういうもののセッティングを想像してたんだけど。
 ついでにいうと、大企業傘下のくせに経営基盤が弱いらしくて、残業代なんか出たことがない。
 期待と現実とがあまりにも乖離しすぎてたし、待遇もあんまりだったんで、僕は一年と七ヶ月後に、そこをやめた。
 で、実家に帰ってきたんだ。実家は時計屋をやってるんだけど、僕は時計屋を継ぐ気なんかサラサラないし、当然、爺ちゃんのような時計職人になるつもりもない。
 父ちゃんも兄ちゃんもサラリーマンだけど、僕はそんなのはゴメンだった。ていうか、そんなのをしたくないから、大学卒業と同時に、この町を出たんだし。
 大体、何処かの企業に入って、会社の歯車なんて、気持ちが悪くてしょうがない。人間は、機械の一部じゃないんだ!
 一度しかない人生、パッと花を咲かせないと、生まれてきた意味がない! だから、クリエイティブな仕事に就きたい! その一歩前として、僕はイベント関連の仕事について、感性を磨くんだ! 僕は歯車にはならない! 僕は、決して、時計の内部で回ってる歯車になんかになるつもりはない。なるんなら、文字盤だ! 竜頭(りゅうず)でも長針でもないんだ!
 だから、しばらくしたら、またどこかの大きなイベント会社とかの求人を探すつもりだったんだ。
 ……そう、今年の四月の初旬、あの女の子に出会うまでは。


次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 123