小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:今日も杏とて。extra episode.2 作者:ジン 竜珠

最終回
 そしてニューソウマへ行って、イベント関係の人たちと顔を合わせて、いろいろと打ち合わせに参加して。片島はここに帰って来た当初、、俺に代役を振った関係上、そして本部に相談なく、勝手に俺を連れてきた関係上、肩身の狭い思いをしていたが、俺や杏さんも「自分から申し出た」みたいに説明したし、スタッフの人たちも、背に腹は代えられない、ということで、俺を加えてくれた。
 でもね。セリフは問題ないよ? 声は専門の人がいるから。
 問題はアクションだ。
 一応、殺陣(たて)が決まっているそうで、それを前提に何度も稽古を重ねているという。まあ、当たり前だわなあ。で、一応、俺に可能なレベルでのものに変更することになったが、なんといっても急な話、どこまで変更するかってところでも、詰める必要がある。
 で、一応、俺の身体能力を確認して、「これなら予定していたアクション以上のことが出来る」って、嬉しいことも言ってくれたんだけど。
 演技である以上、覚えないとならねえ。
 できるかな? 前の演劇の時でも、半月以上かかって、舞台の立ち位置から覚えたわけだし。
 そう思っていたら、杏さんが俺に手招きして、部屋の隅まで連れてきた。そして、トートバッグから「あるもの」を出す。
「これって」
 俺は、それに見覚えがあった。三月の定演の時に使った無線機だ。
「これを耳に付けて、スタッフさんから、どう動いたらええか、どこに行ったらええか、指示してもらいまひょ?」
「え? え、ええ。……それはいいんですが。……なんで、こんなもの、持ち歩いてるんですか?」
 俺の言葉に、杏さんが肩をビクつかせる。そして、あからさまに動揺した調子で言った。
「ええとな? ……そ、そう、偶然や、偶然! なんかのタイミングで、バッグの中に入ってもうたんやなあ! ウチも、今、気がついたわ!」
 ……断言してもいい?
 偶然、無線機がワンセット、トートバッグに入って、そのことに偶然、今、気がつく確率って、多分、限りなくゼロに近いよね? ていうか、有り得ないよね、そんなこと!?
 俺の疑わしそうな視線を受け、杏さんは言った。
「竜輝はん。細かいことは、気にせんとき」
 いつものような、なんか企んでそうな笑みを浮かべて。

 で、練習しているときに、杏さんと片島との会話が耳に入ってきた。

「天宮先輩、もしかして、天宮くんに、その、恋心とか、抱いてるんですか? でも、天宮くんには、鬼城さんっていう恋人がいるみたいですけど」
「え? 恋心とか、そないなもん、持ってまへんえ?」
「でも、喫茶店の会話、耳に入った限りじゃあ、そんな感じでしたけど?」
「ああ、アレですか。……あのお喋りの中に、一言でも、ウチの名前とか、竜輝はんのお名前とか、出てきましたやろか?」
「でも、『独り占め』とかなんとか」
「現実的に不可能やけど、もしできるんやったら、今日は、なににも煩わされず、あのお店のスイーツとか、ゆっくりと独り占めにしたいなあ、って思たんですけど?」
「……」
「それにな、ウチ、親戚とかの、血の近いお人との色ごととか、そんなん、生理的に受け付けまへんのや」

 ……。
 えっと。
 今回は、これまでと違って、完全に「俺の自主的意志」で、参加してるし。
 だんだん、巧妙になってくるなあ、杏さんの手口。


(今日も杏とて。extra episode.2・了)


← 前の回  ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 95