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作品名:今日も杏とて。extra episode.2 作者:ジン 竜珠

第3回
 約束の時間は、午前八時半。杏さんが何か咒術を使ったんだろう、カウンター席が五つと、ボックス席が四つあるだけの、小さな店だが、客は俺たちしかいない。
 もともとここは「エテールノ・ジョイア」っていうスイーツ専門店だった。で、ここのパティシエが、とんでもねえレベルのJK好きで。それだけなら問題はねえんだが、なんでも盗撮用の、ローアングルのカメラを仕込んじまったんだそうだ。それが元で店は潰れてしまって、そのあとに入ったのがこの喫茶店。
 杏さんはいつものように、桃色のニットに、インディゴブルーのサロペットの丈の長いスカート、薄手のアイヴォリーのカーディガンを着てトートバッグを持ってる。パッと見た感じ、あのバッグに、この間のようなデッカいものは入っていそうにない。化粧道具とか、身の回り品程度だろう、と、思う。
 俺はカフェオレ、杏さんはミルクティー。店内のBGMは、ジャズだ。メロディは聴いたことあるな。確か、「Whatever will be、 will be」っていったっけ?
「どうしたんスか、杏さん、改まって?」
 俺の言葉に、杏さんが、なんだか、ためらったように周囲を見ている。もしかして、人に聞かれたくないとか? でも、だったら、そもそもこんな場所は指定しないはず。だから、ある程度、人に聞かれても構わない内容だとは思うんだが。
 それでも、普通じゃない杏さんの態度が気になる。もしかして、なにか大事件の予兆でも掴んでるんじゃ……。
 その時、店のドアが開いて、客が入店したらしい。俺は入り口に背を向ける格好になってるからわからねえけど、杏さんからは、入ってきた客を見ることはできる。
「……杏さん?」
 顔を上げて、入店してきたお客さんを見たときの杏さん、なんか、妙だな?
 それまで神妙な表情だったのに、一瞬笑ったような……。そう、いつも浮かべてる、何か企んでるときの笑みが、口元に浮かんでたような……。
「おや? どうかしましたか、竜輝はん?」
「いえ。別に」
 確証がなかったんで、俺はそう答えておいた。


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