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作品名:今日も杏とて。episode.6、out of numbers.3 作者:ジン 竜珠

第7回 out of numbers.3−2
「あの子、自分自身の『色恋』には、まったく興味持ってないと思うの。碧海(あおみ)の凉(りょう)ちゃんみたいに」
 その言葉に、また唸ってから、輝鵬は応えた。
「なるほどなあ。……それもそうだな。そういえば、いつの間にか凉は、修行の虫になってたし。修行が面白くなったんだろう。もしかして杏ちゃんも、そうなのかな。……ん? どうした、溜息なんかついて?」
「……いいえ、なんでもないわ」
 そう言ってから、瞳は心の中で、思い切り呆れた。
 この男、凉がなぜ「自分の色恋」に興味を持っていないのか、いや、「そういう想い」を封印するに至ったか、気づいてなかったのか。やはり、傍目八目(おかめはちもく)、当事者にはわからないものなのだろう。
 もっとも、仙滿自身も、凉のそんな「想い」には気づかない振りをさせてもらったのだが。
 いや、あとから思うのに、凉が、「仙滿が何もかも気づいている」のを前提に、自分の気持ちを抑えたフシはあったのだが。
「ということは、珠璃ちゃんか」
「ええ。二人とも好き合ってるし」
「しかしなあ」
 と、輝鵬はまだどこか納得していないようだ。不服に感じるところはあったが、それを声に乗せずに仙滿は聞いた。
「あら、まだ何か不満でも?」
「不満というわけじゃなくて。あの子に『天宮の嫁』はつとまらないような気がするんだ」
 その言葉に咳払いをして仙滿は言った。
「私と結婚したとき、あなた、宗家を継ぐという覚悟をお持ちでしたか?」
「え?」
 思わぬ言葉だったのだろう、輝鵬が頓狂な声を上げた。
「だから、あなたが私と結婚したときに、いずれは宗師になる、ということまで、心を強く決めてたか、って聞いてるの!」
 やや強い語調になってしまったが、偽らざる気持ちだ。
「いや、それは、なんていう、か……」
 輝鵬の声が、すぼんでいく。それを察して、仙滿は一気にたたみかける。
「『立場が人を作る』って、あなたもわかってるわよね!? それに、時代に合わせて変わっていくのが『家』っていうものなの。確かに変えちゃいけないものもあるけど、それは教えていけばいいことでしょ!?」
「……はい」
 小さな声で、輝鵬が頷いた。


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