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作品名:今日も杏とて。episode.6、out of numbers.3 作者:ジン 竜珠

第6回 out of numbers.3−1
 連休を控えたある日。
 天宮輝鵬(あまみや きほう)は、久しぶりに実家に帰っていた。
 彼は今、「白修祓(つくもしゅばつ)」という、一種の魔物退治をする修行に携わっている。その関係上、世界中を巡っているが、小休止をとる期間もある。今は、「休止」の時期だ。
 仙滿(ひとみ)も、輝鵬の修行の関係で、実家に腰を落ち着けている日は少ない。といっても、彼に同行しているわけではない。輝鵬の行動に対応する形で、国内各地を回っているのだ。
 こうして二人揃って宗家の実家で過ごすのは、一年の中で数回、そして一回につき多くても七日ほどだろうか。だから、何でもない日でも、貴重であった。

 その日の朝、居間で二人は、なんということもない話をしていたが、なにかの折りに竜輝の結婚の話になった。
「おいおい、竜輝はまだ高校生だぞ? 早いって、そんな話」
 と輝鵬は言ったが、仙滿には彼女なりの考えがあった。
「竜輝は、この一年で、随分と成長したわ。お父様……宗師も、いろいろとお考えのところがおありのようよ? だったら、私たちも、それなりのことを考えておいた方がいいと思うけど?」
 そう言うと、輝鵬はちょっとだけ唸ってから言った。
「うーん。確かに、そういうところもあるなあ」
「でね」
 と、仙滿は身を乗り出した。
「私としては、珠璃ちゃんがいいと思うんだけど?」
「珠璃ちゃんか」
と、輝鵬は考え込む。何か、いろいろと思うところがあるらしい。それを感じ取って、仙滿は言った。
「なあに? 珠璃ちゃんじゃ不満なの?」
「いや、不満てわけじゃないが」
 と、歯切れの悪い答え方をしてから、輝鵬は言った。
「俺としては、杏ちゃんに来て欲しいんだ」
「杏ちゃんに?」
 杏を竜輝の妻に、というのは、かつて仙滿も考えていたことだから、意外、というほどではないが、それでも少しばかり、驚いた。もしかしたら、輝鵬も自分と同じものを見て、同じ考え方をしていたのかも知れない。そう思うと、二人は仙滿が思っている以上に「繋がっている」と、感じられたからだ。
「あの子は『道士とはどうあるべきか』を考えて、行動している。道士としても、人間としても、理想的だ。だから、竜輝の傍にいて、その背中を見せてやって欲しいんだ」
 やはり、同じことを考えていたようだ。それが少し嬉しくなり、仙滿は明るい声で言った。
「あなたの言うこともわかる。私も、杏ちゃんに竜輝と結婚してもらったら、どんなにいいかって思うの。でもね、だからこそ、杏ちゃんと竜輝を結婚させるわけにはいかないのよ」
「? どういう意味だ?」
 首を傾げた輝鵬を見て、どうやら「この部分」まで、思い至ってなかったか、と少しだけ残念に思ったが、輝鵬は白修祓に専念しているわけだから、その他のことを深く考える余裕はない。
 そう思って、仙滿は言う。
「道士として優れているからこそ、杏ちゃんを『天宮』の家に閉じ込めるわけにはいかない。あの子は、一人の道士として、輝くべきなのよ。それに」
 と、仙滿は輝鵬の瞳を覗き込むようにして言った。


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