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作品名:今日も杏とて。episode.6、out of numbers.3 作者:ジン 竜珠

第5回 episode.6−5
 充幸の表情から何を読み取ったか、杏が苦笑を浮かべた。
「すんまへん、ちっとややこしい言い方になってしまいましたなあ」
「い、いえ、気にしないでください」
 充幸が、慌てたように言ったが、その表情から察するに「じゃあ、結局、俺はどうしたらいいんですか?」と、本当は言いたいのだろう。
 少しだけ考え、杏は言った。
「まずは、この『私事』を考えることやな。それが『仕事』になるんか、『使事』になるんか、最終的に『志事』になるのか、それはまだ、考えんでもよろし。それで、その『私事』をするためには、何が必要なんか、考えて、調べることや。そうしたら、どこかに進学したらええんか、それとも、お勤めしたらええんか、見えてくる、思います。あとな、これだけは忘れて欲しゅうないんですけど」
 と、また、柔らかい笑みを浮かべた。
「人間な、時間が有るようで、無いし、無いようで、有りますのや」
 最後に、やっぱり意味不明なことを言っていた。

 充幸が帰ると、どうやらもう相談者が来ないことを予知していたらしい、
「珠璃はん、お店、閉めまひょ?」
 と、杏が帰り支度を始めた。
「あんなあ」
 と、杏がスタッフルームで、珠璃に言った。
「ウチがどうこう言うことやあらへんけど、ちょっとだけ、言わせていただいても、よろしやろか?」
 珠璃が頷くと、杏が言った。
「珠璃はんが、お選びになった『道』は、厳しおす。生半(なまなか)な覚悟で歩ける道やおまへん。それでも、よろしか?」
 どうやら、杏は珠璃がどんな「志事」を選び取ったのか、わかっているようだ。だから。
「ええ。まだ、その覚悟が出来たとは言えないけど、ボクは自分自身で、その道を歩いて見せます」
 その言葉に、杏が満足そうな笑みを浮かべる。そして、また言った。
「あともう一つ。これはお願いなんですが」
「お願い?」
 杏がお願い事など、珍しい。そう思っていると、杏が頷いてから言った。
「この制服、なんとかするように、珠璃はんからも紗弥はんに言うてもらえまへんやろか?」
「却下です」
「……いけずやなあ」
 珠璃の言葉に、杏が泣きそうな笑みを浮かべた。


(今日も杏とて。episode.6・了)


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