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作品名:今日も杏とて。episode.6、out of numbers.3 作者:ジン 竜珠

第3回 episode.6−3
「ゴールデンウィークが明けたら、第一次進路希望調査があるじゃないですか。でも、俺、まだ、将来のこととか決めてなくて。ていうか、全然わからなくて」
 新輝学園では、三年生に対して、ゴールデンウィーク明けに第一回目の進路希望の調査が行われる。これにより、選択科目および文系・理系などの進学や、就職関係のクラス分けとは別に、必要な学科の補講や、実技講習などの追加履修が検討され、希望すれば、それを受けられる。早い内から様々な対策が行われるのだ。
 それはそれで有益だが、時期的にまだ、早いのではないか、と感じている生徒の方が多いくらいで、事実、第一次の希望が反映された補講などを受ける生徒の数は、毎年、全体の三分の一に満たないらしい。
 珠璃もそのように思っている一人だ。三年生の早い段階で将来のことが決められるものではない。もっとも、彼女の場合は、少々事情が異なり、「将来のことを自分で決める権利はない」なのだが。
 彼女は、実質的に、天宮流神仙道宗師の直系の娘にして、天宮竜輝の実母である仙滿(ひとみ)に、竜輝の妻の候補として、認められている。それはつまり、いずれは宗家の嫁になるかも知れない、ということだ。その性質上、彼女に「将来の夢」がどうの、と口にする権利は一切ない。
 だが、珠璃にとっては、それはむしろ本望であった。
 世の女性たちからは「主体性がない」と非難されることだろうが、竜輝と同じ時間と空間を共有し、同じ「もの」を見ることができるなら、それが何よりの喜びであった。
 だから、おそらく来年の節分辺りから、彼女の、修行スケジュールも含めた全生活は、宗家によって管理されることになるだろう。
 だから、本当の意味で、充幸の不安を共有することは出来ない。
 充幸の言葉を聞き、杏は、また穏やかな笑みになった。そして、ガラステーブルに備え付けのB六程度のメモ用紙を取り、開く。
「これからウチがお話しするのは、『こういう考え方もある』いう、程度のことです。せやから、絶対こういう考えせなならん、いうもんやありまへん」
 そしてペンを取る。
「『仕事』いう字な、ホンマは、こう書くねん」
 紙に書いたのは、「四事」。
「これで、『しごと』、ですか……?」
 充幸が首を傾げる。


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