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作品名:神氣学園Saga 「BS(Before Season)」 作者:ジン 竜珠

第3回
 杏は、「自分も宗家から『転校』するようにいわれた」と言った。
「この学園でな、何か起こるのがわかったさかい、そのことを宗師にご報告申し上げたら、転校手続きが取られてしまいましたんや」
 と、杏は苦笑いを浮かべる。珠璃も、苦笑するほかない。
 あの宗師らしい。言葉にはしないが、二人の共通認識のようだった。
 二人は今、本校舎と実習棟の間にある「中庭」のベンチにいて、人払いの結界を敷いている。自動販売機で珠璃はココア、杏は緑茶を買った。
「杏さんが探知した『それ』って、直観によるものですか?」
 もしそうなら、自分の能力を補完してくれるかも知れない。そう思って聞いてみた。
「ウチの場合、いわゆる『予知能力』ですなあ」
「予知、ですか?」
「そう。あと、占いです」
 予知能力か。珠璃は考えてみた。この異常事態の正体を突き止めるのには向いていないかも知れないが、この事態の先に何か事件が起きるとしたら、それを事前に把握できるのは、なにかの強みにならないだろうか? その把握した事態を前もって探っていけば、ここの異常な状態の正体もわかりはしないだろうか?
 珠璃がそんなことを考えていることを見抜いているのかどうか、それはわからないが、杏が柔らかい笑みを浮かべて言った。
「予知能力いうてもな、ウチに視えるんは、『変わる可能性を持った未来』です」
「……どういうことですか、それ?」
 言っている意味が、よくわからない。そう思って、珠璃は問うてみた。
「絶対変わらん未来が視えても、なんの意味もあらへん。未来が視えるいうことは『ええことも変わってまうし、悪いことも変えていくことができるから、打てる手があったら、打っときや』いう神さんのご配慮です」
 面白い考え方をする、と珠璃は思った。気のせいかも知れないが、宗師から直接教えを受けたものは、みな豪快な考え方をするように思う。
「そんでな。絶対変わらん未来は視えへんけど、その周辺はわかるんや」
「周辺って?」
 またまた、わからない考え方が出てきた。どうも、特異な技能を持った者は、他者も「そのこと」に関する知識がある、あるいはすぐに理解できる、という前提で話をするクセがある。この学園に来てみたら、どうにもマニアックな生徒が多く、彼らと話していて珠璃はそんなことを実感していた。
「えと、な」
 と、杏は少し考えるそぶりを見せた。
「適切な喩えとは言えへんのですけど。たとえば、道の曲がり角の先に、猛獣がおって、それが見えない、わからないとしますな? でも、唸り声が聞こえたり、猛獣を見たお人が『猛獣や』って叫びながら、逃げてきたら、間接的に『猛獣がおる』ってわかりますやろ? あんな感じやな」
 なるほど、と、珠璃は頷いた。要するに、何かはわからないが、必ず異常な事件が起きるということだ。


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