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作品名:今日も杏とて。extra episode.1 作者:ジン 竜珠

第4回
 またしばらく歩くと、見知った顔に出会った。
「あれ? 竜輝に鬼城さん。それに、天宮先輩に、麻雅祢ちゃん?」
「お? 美悠那(みゅうな)。お前、どうした、こんなところで?」
 そこで出会ったのは、同じクラスの鳳(おおとり)美悠那だ。
「あたしはね、『鈴花堂(すずはなどう)』っていう、和風喫茶に来たの。一年半ぐらい前にオープンしてたらしいんだけど、場所がわかりづらいし、それに、前に来た時、パッとしなかったから、スイーツ研でも取り上げなかったんだけど」
 と、携帯を取りだし、何かを見る。
「なんか、しばらく前からホームページが更新されてないから、もしかして、潰れちゃったのかなあ、って思って」
「それで、偵察に来たのか」
「うん」
 その時、杏さんが割り込んできた。
「『和風喫茶』ですか。行ってみたいわあ。そや、竜輝はん、行ってみぃひん? せっかくやし、和菓子、食べたいし」
 そういやあ、杏さんは洋菓子より、和菓子派だったな。
「そうですね。珠璃、構わないだろ?」
 俺がそう言うと、珠璃は、また、困ったような表情になった。……ホントに、どうしたんだ、こいつ?
 しばらく考えている珠璃をほうっておいて、杏さんが言った。
「ウチ、その場所、知りまへんから、すみませんけど、美悠那はんに、お供さしてもろうても、よろしやろか?」
「ええ、いいですよ」
 笑顔で応える美悠那に礼を言うと、杏さんが俺たちを、楽しそうに促した。
「さ、早う、行きましょか」
 それに応えて俺は歩き出した。
 店に着くまで、珠璃は、時折、溜息をついていたが、こいつも甘い物は好きだったはずだ。もしかして、洋菓子の方がよかったのかな?

 鈴花堂は、確かにわかりにくい場所にあった。いわゆる「隠れ家的スポット」ていうんじゃなくて、純粋に立地条件が悪い。雑居ビルの間にあるせいか、いろいろかぶってしまって、大きな看板を出すこともできないようだ。
 美悠那は「ありすちゃんと、ここで落ち合うことになってるから」ということで、電話を掛けて、待ってる必要があるらしい。まあ、この辺は個人の事情だ。だから、俺たちは、一足先に、店内に入った。
 ……入ったところで、こんな声が聞こえてきた。
「もう、お店、たたみましょう?」
 ……穏やかじゃねえな。


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