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作品名:今日も杏とて。out of numbers.2 作者:ジン 竜珠

最終回
「え、と。岩崎さん。ご覧になってましたよね?」
 俺が、おそるおそる尋ねると、岩崎さんは笑顔になって言った。
「ええ。天宮さんは、拳を構えただけ。社長が、勝手にひっくり返って、気絶したんです。……それにしても、すさまじい『氣迫』ですね。私も、昏倒しそうになりましたよ。かなり修行なさった、と、お見受けします」
「え、ええ、まあ」
 言えねえわなあ、「死の女神相手に、命をぶつけました」って。

 で、「恨みの念」の浄化の儀式やら、潤一郎さんの快復の儀やらをやって、ちょっと仮眠をとっていたら、朝になった。岩崎さんの運転する車で、杏さんとの待ち合わせ場所である、海浜公園まで連れてきてもらった。姉貴に、ここへ迎えに来てもらうことになってる。
 杏さんは、と。
 いたいた。柵にもたれてる。のんきに朝の海でも眺めてたんだろう。
 その間、こっちは「恨みの念と、死んだ奥さんの霊と、今の奥さんの生き霊が絡んでて、しかもその元凶が依頼人で、その依頼人、自分のしたことに全く気づけてなくて、責任転嫁ばっかりしてて、そのしわ寄せが息子さんに来ていた。だから、これからも同じようなことが、何度でも起きる可能性、大。なので、息子さんに恨みの念が来ないように、結界を張った。社長のことは、半ば放置。それも自業自得。しかし、社長に『さわり』が出ないことも考えられるわけで、その場合、どこに影響が出るか、ちょっとわからない」っていう事態に、かかずらっていたんだからな。
 ……改めて言葉にすると、本当に、めんどくさいな、今回の事件。
 一言、言っておいた方がいいかも知れない。
 俺は、杏さんに近づいた。
 杏さんが俺に気づいて、こっちを見た。
「お願いですから、ややこしいことに巻き込むの、やめてもらえませんか?」
 俺がそう言うと、杏さんは、イタズラっぽい笑みを浮かべて応えた。
「すんまへんなあ」
 ……うん。この笑顔は、全っ然、反省してない。これからも、俺をめんどくさいことに巻き込む気、満々と見た。
 その時、俺は「あるもの」に気づいた。
 年の頃なら、三十前だろうか。ちょっとエネルギーレベルが落ちてる、女性の幽体だ。それだけなら、まあ、問題はない。幽体だの、生き霊だのが、フラついているっていうのは、そんなに珍しいことじゃねえしな。
 だが、その周囲に邪気が漂ってきている。あんまり、いいことじゃねえな。この事態に、杏さんが気づいてないはずは、ねえ。
「えっと。とりあえず、俺は『黙ってみてる』んで、いいですよね?」
 なので、俺がそう言うと、杏さんが頷いて、その女性の幽体に言った。
「あんさんなあ、今、魂が離れてる状態なんや」


(今日も杏とて。out of numbers.2・了)


あとがき:今回は、ちょっと「らしくない」お話でしたかね?


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